中国に遅れてきた先進国病…大卒生が世をはかなんで「ゾンビスタイル」に

「大学は出たけれど」。日本映画界を代表する巨匠、小津安二郎監督によって撮影された1929年公開の映画タイトルで、当時は昭和恐慌を象徴する流行語にもなった。そんな「大学は出たけれど」を地で行くのが、現在の中国の若者の就職事情だ。

「中国が17日に出した経済指標では、4〜6月の4半期のGDP成長率は昨年同期比で6.3%の伸びだったものの、1〜3月期に比べるとわずか0.8%の増加でしかなく、1月にゼロコロナ政策を終了してからの回復が完全に鈍化しています。さらに、若年層の失業率が最悪な状況で、都市部の16〜24歳の失業率は前月よりも0.5ポイント悪化して21.3%となり、5人に1人が無職の状態なのです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 そもそも、中国の若者の深刻な労働事情は失業率だけで測れるものではない。中国国内で「寝そべり族」という言葉が注目されたのは昨年ごろから。激しいことで知られる同国の大学受験競争をたとえ勝ち抜けたとしても、卒業後に待っているのは朝9時から夜9時までの週6日でマシーンのように働く「996」と呼ばれる生活。それを嫌がって将来を早々に諦めた若者は、何もしないで寝そべって生活を送る。だから「寝そべり族」というわけだ。彼・彼女らは家や結婚、子供、車などを「しない・持たない」がモットーとされる。

 9月入学の中国では、いま7月が卒業式シーズン。だが先ほどの失業率だ。「学生」という肩書がとれればたちまち単なる無職になるということで、中国のSNSには、卒業式の盛装をしたまま街中の地べたに倒れるという写真が続出。「ゾンビスタイル」などと呼ばれているのだとか。

「中国では国家の成長と共に高学歴化も急速に進みました。2000年には100万人ほどしかいなかった大卒者数が、今や1000万人を突破。今夏は1100万人を超えるとされています。その多くの受け皿が、ITや不動産、教育関連企業だったのですが、この産業は格差社会の是正を図ろうとする習近平の『共同富裕』政策で厳しい規制を受けて、急速にしぼみました。一方、習近平政権は米中対立に執心。3月にはアステラス製薬の日本人社員がスパイ容疑で拘束されましたが、7月には『反スパイ法』を成立させて、あえて外国企業から不審の目で見られるようなことをしているため、『官製不況』との声も上がっています」(同)

 国が大きいだけに先進国病も桁外れに大きく、かつ後発なだけに早く進行する中国。政治にモノを言えない若者は、やはり地べたに寝そべるしかないのかもしれない。

(猫間滋)

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