トレード終了まで、2週間を切った。その動向で大きな注目を集めているのは、新井カープだった。第3捕手・磯村嘉孝(30)である。
「磯村は7月10日に一軍登録を抹消されました。チーム内での立ち位置は『正捕手・坂倉、控え・会澤、不測の事態が起きたら磯村』という感じです。攻守ともにそつなくこなしているし、新井貴浩監督も迷っていると思いますよ」(地元メディア)
磯村のキャリアハイは65試合に出場した2019年。いわゆる“高卒叩き上げ”のいぶし銀の捕手だが、今季は9イニングしかマスクをかぶっていない。坂倉が540イニング強、ベテラン・会澤が130イニング以上だから、いくら第3捕手でも、「出場機会が少なすぎる。トレードに放出するために一軍登録を抹消されたのでは?」というのが、関係者たちの一致した見方だ。
「新井監督は坂倉を捕手としてしっかり育てていこうとしています。前政権では打撃優先で一塁や三塁を守ることのほうが多かったですが」(前出・同)
育成優先で、11月に31歳になる磯村は“トバッチリ”を受けたのである。ここに重なってくるのが、磯村のキャリアだ。
磯村は「あと59日」で国内フリーエージェント権を獲得する。昨年オフ、オリックスから日本ハムに移籍した伏見寅威、DeNAからソフトバンクに行った嶺井博希など、FA権を行使して出場機会を求めた控え捕手のケースを見れば、磯村も高く評価してもらえるはずだ。
「磯村は推定年俸2100万円のCランク選手だから、人的・金銭的補償は発生しません。損得勘定で言えば、トレードに出して、交換要員をもらったほうが球団としてはプラスです。でも、今の広島はAクラスの3位で首位阪神とも僅差です。優勝争いをしていくのなら、経験豊富な磯村を出すのは得策ではありません。かといって、広島は支配下登録の捕手は8人もいて、20歳そこそこの捕手もファームで頑張っています」(前出・同)
新井監督は迷っているのだろう。登録抹消はFA権を取得させないための“封じ手”とは思いたくないが、トレード期日まで広島の出方に注目が集まりそうだ。
(飯山満/スポーツライター)