「マスコミにはお上からお達しでも来ているんじゃないか…」
ある地震専門家がこう語るように、東京五輪まで1年を切ったいま、つい先ごろまで事あるごとにテレビや新聞で扱われていた“首都直下型巨大地震”に警鐘を鳴らす報道が、すっかり鳴りを潜めている。
「1880年代以降、M(マグニチュード)6.7以上の首都直下地震は5回起きており、平均すると25年ほどの周期で発生しています。最後のものは、1987年に発生した千葉県東方沖地震で、それからすでに32年が経過している。つまり、いつ首都直下地震が発生しても不思議ではない状況と言えるんです」(地震学が専門の大学教授)
そもそも日本列島はいま、地震の活動期にある。東日本大震災は、869年に同じ三陸沖で起きた貞観地震の再来とも言われ、その前後には富士山の大噴火や相模・武蔵地震、南海トラフ巨大地震との見方もある仁和地震など、大規模な地殻変動が連続して起きていた。
「状況を考えれば、現在は当時と似ているという見方もできる。つい最近も、6月に新潟県などで震度6強、8月4日にも福島県、宮城県で震度5弱の地震が発生したばかりで、いつ大きな地震が起きても何ら不思議ではない。そもそも、こんな時期に五輪など開催していいものなのか、と指摘する専門家もいるほどです」(サイエンスライター)
冒頭の専門家が疑問をもつように、確かにこのところ、巨大地震に警鐘を鳴らすような番組はほとんど見られない。いたずらに恐怖心をあおるのはよくないが、「東京五輪開催中に首都直下型巨大地震が起きたら」のシミュレーションを流すことは、防災や避難のイメージ作りに役立つと思うのだが。
(蓮見茂)