「LGBT法」可決も中身は誰得? 岸田首相「敵前逃亡」のお粗末

 6月13日に「国会の情勢を見極めたい」と解散の含みを持たせながら、結局15日になると解散見送りを表明した岸田首相。

「理由は主に、自民党が6月に行った情勢調査で早期の解散に打って出たら40議席を減らすとの結果を受けたからでしょう」(全国紙記者)

 つまり内閣支持率が急上昇した一方、何かあれば簡単に下落に転じる底の浅さを自ら体現したようなものだ。

 情勢調査が思わしくなかったのは、異次元の親バカぶりを露呈したのと、従来の保険証を廃止する実質強制のマイナンバーカードのゴリ押しでトラブルが相次いだからだが、今国会で「50本のうち48本を通した」と胸を張った法案成立も、特に6月16日に成立したLGBT法は異例のヒドさだった。

「そもそもLGBT問題では、同性婚について2月に首相自らが『社会が変わってしまう』と答弁して批判を浴びた直後に、首相秘書官が『隣に住んでたら嫌だ』などと差別モロ出し発言で更迭されました。そんな、客観的に見てもLGBT問題にかなり後ろ向きな岸田首相がいきなり今国会での法案成立に動いた理由は、1つにはサミット前にG7で唯一同性婚を認めていない非多様性の国の汚名をそそいでおきたかったから。それともう1つが、自民党最大派閥の旧安倍派の分断です。旧安倍派の岩盤保守層にLGBT法案成立の踏み絵をつきつけて分断を図り、第4派閥の岸田派のプライオリティを相対的に上げる狙いもあったと見られています」(同)

 そして成立したのが、日本維新の会と国民民主の法案を丸のみした異例な法律で、中身的にもLGBT“理解増進”というかなり「いまさら」なもの。にもかかわらず、そもそもLGBT法に反対する右派からも、法律を求めるLGBT関連団体からも『かえって権利の主張が制限されるおそれがある』などの反対意見が上がって、大山鳴動してネズミ一匹。むしろ分断の火種を作った可能性もあるという始末。

 もともとサミットは、入管法の問題と併せてG7並みの人権を揃えるのが日本の「裏テーマ」だっただけに、当のサミットが終わってしまうと岸田首相も興味を失っていたのだろう。結果、出来上がったものは、まったくもって「誰得?」という奇妙なものだった。

 そんな具合だから、15日の解散見送り後に行われたメディア各社の調査では軒並み支持率がダウンし、特に毎日新聞のそれは45%から33%へ12ポイントも落ちてしまっている。

 思えば早期解散風が吹いたのもサミット後に支持率が50%台をつけたから。その前の3月には、韓国の尹錫悦大統領が外交関係で折れて訪日、日韓関係の歴史的雪解けに至るという「棚ボタ」から始まり、その後サミットで頂点を迎えた。だから今回の事態を韓国大手新聞の「中央日報」は「韓日首脳会談効果消え」という見出しで報じている。

「記事では、外交的成果で支持率を積み上げた『外交の季節』が去り、『内政の壁』に当たっていると評しています。極めて客観的で正しい分析だと思います」(別の全国紙記者)

 少子化や防衛費の財源問題は先送り、その後、マイナンバーカードは障害者手帳の紐づけでもトラブルが持ち上がり…といったこともあり、支持率は下がりこそすれ再び上がる要因は見当たらず、こうなれば元々有力だった秋の解散とてどうなるか分からない状況だ。

(猫間滋)

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