5月29日、太陽から光が発している様を表した「旭日旗」を掲げた海上自衛隊の護衛艦「はまぎり」が、韓国釜山に入港した。韓国政府が催す海上封鎖訓練「イースタン・エンデバー」に参加するためだ。この演習は北朝鮮による大量破壊兵器の密輸入などを想定して、日米豪が参加する。
韓国で旭日旗と言えば、軍国主義と侵略戦争の象徴として、忌み嫌われていた。韓国では「戦犯旗」とも呼ばれる。
近年では19年、旭日旗の競技場への持ち込みを禁じるよう、韓国側が東京オリンピック組織委員会に要求を入れるなど、国際スポーツの場では何かしら騒動になるのが常だった。スポーツ以外でも、どこそこのアーティストが旭日旗を思わせるデザインを使ったなど、ナチスの鍵十字と同様に、韓国内の反日勢力が抗議や苦情の声を寄せたというニュースが度々伝わってきた。
となれば、ましてや日本の自衛隊が旭日旗を掲げて韓国国内に入港というのだから、よほど大騒ぎになるかと思いきや、今回は事情が大きく異なっていた。
「まず、尹錫悦政権が『国際慣例に従うもの』として旭日旗の掲揚を自然なこととしました。というのも旭日旗は自衛隊法で定められた、海上自衛隊の正式な自衛艦旗だからです。そして国際法では各国の艦艇は国籍を示す外部標識を掲げることが定められているので、自衛隊の艦艇が旭日旗を掲げることは、その言葉通り自然なことなのです」(全国紙記者)
尹大統領は5月に韓国で行われた日韓首脳会談でも「歴史の切り離し」を強調し、文在寅前政権の反日政策から大きく転換させた。日韓関係がいかに変わったかが、今回の入港でも明らかになったわけだ。
ところが黙っていられないのが、「共に民主党」ら野党の人々。同党のカン・ソヌ報道官は、「(今回の入港許可で)尹錫悦政権は国民の自尊心を踏みにじった」と批判したものの、実は歴史を見ると、いまになって旭日旗が敵視される根拠が曖昧だ。
「旭日旗を掲げた自衛隊艦艇の韓国入港は、98年の金大中と07年の盧泰愚政権時にも行われています。だから今回のことが許せないということなら、同時に韓国の歴代政権の過去も問われないとおかしい。18年には文在寅政権下でもやはり旭日旗を掲げた自衛隊艦艇の入港が問題視された結果、海上自衛隊が参加を見送って、訓練を行う本来の意味を失うということがありました」(同)
加えて、旭日旗を“戦犯旗”とする起源も実は曖昧なのだ。
「定説としては、11年に行われたサッカーアジア杯で行われた日韓戦でモメた際にナショナリズムの問題が持ち上がり、この時にやり玉に挙げられた辺りから旭日旗が一気に悪者扱いされるようになったとされています。18年の訓練に海自の参加が見送りになったとき、朝鮮日報は『なぜ今になって韓国は旭日旗に怒っているのか』というタイトルの記事を掲載し、過去の記事を検索してその起源を探ったほどでした」(同)
ましてや歴史が動けば、過去には効果があった批判も当てはまらなくなることもある。ただ韓国は政権が変わるといつ掌返しをされるかしれず、注意が必要だ。
(猫間滋)