ロシアによるウクライナへの戦術核使用が懸念される中、被爆地・広島で開催されたのが先進7カ国首脳会議(G7サミット)だった。だが、実はこのサミットの直前、「開催中にロシアが戦術核の使用に踏み切る」との未確認情報が流れ、参加国の間に緊張が走ったという。
「情報のもとになったのは、バイデン大統領がサミット直前に、不参加の可能性を示唆したことにあるようです。債務上限問題へ対応するためですが、一方で、プーチン大統領の戦術核使用がいよいよ準備段階に入り、バイデン氏が本格的な協議に入ったから、ともいわれていたんです」(全国紙記者)
結局、サミット開催中に核が使用されることはなかったが、依然としてロシアによる戦術核使用は予断を許さないのも事実だ。
核の使用についてロシアは、「国家の存立が脅かされた時」「戦術核なしには戦況を挽回できないと判断した場合」としている。しかし、一方では、限定的に戦術核兵器を使うことにより、最大限に緊張を高め、その流れのまま相手側に停戦などを強いる「エスカレーション抑止」効果を狙う、という見方もある。
そこでガ然、注目されているのが、仮にロシアが戦術核を使用した場合、アメリカやヨーロッパなど西側諸国はどんな「報復攻撃」を行うのか、という問題である。
「米軍や欧州のNATO軍による通常攻撃での報復も考えられますが、核使用による報復攻撃も両軍内で議論はされているはずです。例えば、バルト海に面するロシア領土であるカリーニングラードの軍港といった場所が想定できるとした報道もありました。ただ、ロシア領土に核を落とせばそれこそ全面核戦争に発展してしまう可能性があり、現実的にはあり得ない。そこでロシア本土を避けて攻撃する、というプランも浮上したといいます。プーチン氏はロシアの隣国で同盟国のベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明していることもあり、この地が標的となる、と断定したメディアもありましたね。しかし、実際のところは不明です」(前出・記者)
なんにせよ、いったん核が使用されれば未曾有の事態に発展する可能性は極めて高い。サミットでは「ロシアによる核の威嚇、使用は受け入れられない」という「広島ビジョン」があらためて確認されたが、一方で各国関係者は、ロシアの動向を固唾を飲んで見守っているという状況なのだ。
(灯倫太郎)