国際刑事裁判所が「本気で逮捕状発行」プーチン氏が「電撃逮捕」される可能性はあるか

 オランダのハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)が、ロシアの国家元首であるプーチン大統領に逮捕状を発行したのは、3月17日のことだった。

 ICCは、ジェノサイドや戦争犯罪などの事案を捜査・審理し、それらの行為を命令した決定権をもつ立場の者の責任を追及、処罰する役割を担っているが、

「今回、プーチン氏への逮捕状発行理由は、『子どもを不当にウクライナからロシアへ移住させた』とする嫌疑です。通常であれば、捜査着手から逮捕状発行まで数年かかるとされるICCの手続きが極めてスピーディだったことから、国際刑事裁判所としての本気度が見て取れる対応だったと言わています」(全国紙記者)

 現在、ICC締約国・地域は123で、プーチン氏がこれらの国や地域を訪れた場合は、理論上、逮捕できることになる。そんな中、8月に開催を予定するBRICS(新興5カ国首脳会議)の主催国である南アフリカが、プーチン氏の会議参加を巡り、大きく揺れている。

 というのも、南アフリカは123あるICC締約国の1つ。つまり、プーチン氏が入国した場合、本来であれば「逮捕しなければならない」からだ。

「周知のようにBRICSは、米国の『一極支配』に対抗する多極主義の舞台として、プーチン政権が、中ロ主導の上海協力機構(SCO)と並んで重要視している会議です。プーチン氏がこの会議に欠席したとなれば、『逮捕が怖くて逃げた』とされ、BRICSでの発言力が一気に低下することは間違いない。そのためも、何をおいても南ア行きはだけは外せないはず。一方、ICC締約国の南アとしては、プーチン氏が来れば逮捕しなければならない。南ア首脳陣も頭を悩ませているようです」(前出・記者)

 南アの大統領報道官はこの問題について「法的義務は認識している」としながらも、「首脳会議までの間、さまざまな利害関係者と連絡を密にしていく」とコメント。パンドール国際関係・協力相も、「ICCの逮捕状発付にかかわらず、BRICS首脳会議へのプーチン招待は有効」として、政府内及び、ロシア側とも「今後の対応を協議する」との声明を発表している。

 ところが、そんな最中、ロシアメディアが、南アのラマポーザ大統領がICCから脱退する方針であると報道、これに対し南アの大統領府はすぐさま「情報が誤って伝わった」としてICCからの脱退を否定するという騒動が起きた。

「ICCは過去に、集団虐殺に関与したとされるスーダンのバシール元大統領に逮捕状を発行したことがあります。ところが、同氏が南アを訪問した際、南ア政府は彼を逮捕することなく帰国させてしまいました。逮捕しなかった理由として南アは、『ICCの起訴対象がアフリカに集中していて差別的』として、その後、ICCからの脱退を宣言しています。しかし、実際に脱退手続きは実行されず、現在も締約国のままなのです。つまり、ICC締約国とはいえ、実効性には温度差があるということです」(前出・記者)

 ロシア大統領府のペスコフ報道官は4月24日、プーチン氏がBRICS首脳会議に出席するか否かは、時期が近づいたら適切に決定するとコメントした。

 プーチン氏の動向と南アの対応に、全世界が注目しているのである。

(灯倫太郎)

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