映画「スラムダンク」が中国で大ヒット、ブームの陰で福岡の日本酒がバカ売れ

 中国で「スラムダンク」の勢いが止まらない。人気コミックを映画化した「THE FIRST SLAM DUNK」が4月20日に公開されると、4日も経たないうちに観客動員数は1000万人を突破。すでに興行収入は78億円を突破し、100億円の大台に届くのは時間の問題と見られている。

「『スラムダンク』は中国にケーブルテレビが普及しはじめた90年代にアニメ版がオンエアされ、大人気を博しました。その時に見ていた子供たちが、現在30代40代となって今の熱狂を生み出したと言われています。事前のチケット販売額だけで約19億5000万円の売り上げがあり、公開初日は全国で13万回も上映されました。これは中国全土で上映される映画の8割に当たります。先に劇場版が1月に公開された韓国では、観客動員が400万人を超えていますが、中国は分母が桁違いに大きいですからね。5月頭にGWの連休が続くのは中国も同じ。3月24日に公開された新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締り』もヒットして150億円の興行収入を上げていますが、これを超えてくるだろうと予測されています」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 ところで、中国に先駆けて公開された韓国版は、登場人物の名前が韓国流にアレンジされたものだった。主な登場キャラを挙げると、「桜木花道」は「カン・ベクホ」、「流川楓」は「ソ・テウン」、キャプテンの赤木剛憲は「チェ・チス」といった具合だ。だが、中国版は日本語の表記そのまま。ちなみに桜木花道の表記は「櫻木花道」そのままで「インムー・ホォワダオ」と読む。

 そうした背景もあって、なぜか日本の「三井の寿」(みいのことぶき)という酒が中国で注目を集めているという。

「『三井の寿』は福岡県の酒造会社『みいの寿』が作っている日本酒です。『スラムダンク』では、湘北高校が誇るスリーポイントゲッターとして『三井寿(ひさし)』というキャラが登場しますが、実はこの三井の名前は、この日本酒の名前から取ったものだと、原作者の井上雄彦さんが明かしています。この酒造会社が、三井寿のゼッケン『14』をラベルにあしらった超辛口の日本酒を2012年に売り出したところ大ヒット。日本酒は高い関税がかかるのにもかかわらず、2017年には中国向けに約1万本を出荷して即完売したと言いますからね。現在は映画の記録的ヒットでブームの真っ最中。中国のSNSでは、この『三井の寿』について『どこで買えるのか?』『福岡の酒造に行くしかないな』といったコメントが見られます」(前出・ジャーナリスト)

 韓国版の「スラムダンク」で三井寿はハングル表記で「チョン・デマン」となっているが、中国では「三井寿」のまま。アニメであれ日本酒であれ、日本の文化が世界に広がるのは非常に喜ばしい事だ。

(猫間滋)

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