ツイてない?とんでもない!岸田首相「WBC熱戦中にウクライナ訪問」の超強運ぶり

 3月21日午前、3月19日から22日の予定でインドを訪れているはずの岸田首相がウクライナを電撃訪問。22日の松野官房長官の会見によれば、ウクライナと慎重な調整を重ねた上で実現したものだという。

 この件について、キャスターの辛坊治郎氏はニッポン放送のラジオ番組で「ツイてないね、この人は」と感想を漏らしたそうだ。この日の午前はWBC準決勝の日本対メキシコ戦が生中継されており、一報はまさに日本がこれからサヨナラ勝ちをしようというタイミングだった。野球中継を見ていた人の多くは、一瞬「えっ!」とは思いつつも、「それよりも侍ジャパンが」と観戦モードに戻ったに違いないからだ。

「でも、果たして“ツイていない”と言えるでしょうか」と全国紙記者は言う。

「ちょうどこの時、中国の習近平国家主席は“平和の使者”を気取ってロシアのプーチン大統領を訪ねていた。期せずして岸田首相は習近平の向こうを張った外交を行っていたわけで、日本国内から見れば“たまたま”のタイミングでも、外から見れば、例えばワシントン・ポストなどは『日本がアジアを主導する国として西側の立場でロシアに対抗する姿勢を強調した』かのように見ており、いつもながら岸田首相はツイている人だなと思います」

 実際、中国もさすがに「余計なことをしやがって。しかもこのタイミングに」などとは言えないわけで、報道官は「日本が事態の鎮静化に有益なことを行うよう望む」としながら、「逆のことをしないように望む」とチクリと嫌味を言うしかなかった。

 岸田首相が「ツイている」ことは、これまでも複数の識者が指摘してきたところだ。

 首相就任直後、一番の課題だったコロナ対策には既に道筋が付けられていた。安倍元首相が凶弾に倒れるという予想だにしない事態が起こると、政治的求心力が低下するというマイナスはあったものの、独自の政策を打ち出す上での制約から解かれたとも言える。すると今度は国葬強行、旧統一教会問題、コロナ第8波の高まりなどで支持率はガタ落ちするが、次の総理候補がいないため具体的な「岸田下ろし」の動きが出ることはなかった。

「最初にブチ上げた『新しい資本主義』などは明確な中身がないにもかかわらず、春闘では大企業が軒並みベアで満額回答が相次ぎました。最近の国会を見ても、本来は防衛費や子育て支援の財源という増税絡みの話で国会が紛糾するはずが、高市大臣の『捏造』発言問題という、岸田首相としては何も痛痒も感じない話で盛り上がっています。安倍路線を引き継げばよい外交では、韓国で保守政権が成立したことで、尹大統領が徴用工問題の具体的解決策という大きな土産を持って日本を訪問し、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)が正常化しました。全て岸田首相が特段のリーダーシップを発揮したわけではないにもかかわらずです」(同)

 今回のウクライナ訪問にしてからが、昨年6月と12月に現地入りを計画しつつも、情報漏れや国会の事前承認が必要との足枷から断念し、5月のサミット前までにはと期する中、たまたま週末の飛び石連休が利用できるタイミングだったに過ぎない。国会の事前承認の問題も、3月頭に林外相が国会優先でG20を欠席したことが問題視されたことで、外交のため極秘裏に動くことの理解が得られる雰囲気作りにつながっていた。G7で唯一ウクライナを訪れていない首相の汚名を返上しようとしたことが、結果的に大きな印象として残り、まさに「棚からボタ餅」になったようにも見える。

 おそらくは支持率はこれで急上昇するだろう。そして今後は4月に統一地方選があり、5月には地元広島でのサミットが待っている。どこまで岸田首相の強運ぶりは続くだろうか。

(猫間滋)

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