発見!「ニッポンの名城」3大秘密(3)「盆踊りをすると揺れる」松江城の天守閣

 築城の際、石垣が崩れたり工事が難航すると、若い娘が工事の無事を祈願して埋められたという話が各地に残る。ちょっと怖くてせつない「城のヒ・ミ・ツ」を戦国時代に詳しい芸人の桐畑トール氏に聞いた。

「築城工事が難航すると、若い生娘が選ばれて生き埋めにされたりということが戦国時代などには数多くあり、各地に似たような人柱伝説が残っています。島根県の松江城では、その人柱を選ぶために盆踊りを開いて、その中でいちばん上手に踊る美しい娘を人柱にしました。その後、天守閣に、人柱にされた娘の霊が現れ、毎年城下で盆踊りをすると天守閣が地震のように揺れたので、盆踊りを禁止して娘の霊を供養しました。今でも松江の一部の地域では盆踊りをしないところがあるそうです。

 福井県にある丸岡城にも哀しい話があります。築城する際に、天守台の石垣が何度も崩れて工事が進行しなかったので、母子家庭で片目の不自由な若い未亡人のお静さんが、人柱になる代わりに自分の息子を武士に取りたててもらう約束をして人柱になります。しかし、その約束は破られて、これを怨んだお静さんの霊は片目の大蛇になって大雨を降らせ、洪水を発生させました。この雨を地元の人たちは〝お静の涙雨〟と呼んだそうです。約束を破った城主は柴田勝豊という織田家の宿老でお市の方と結婚した柴田勝家の甥ですが、清洲会議で近江の長浜城に移封されたことで約束を果たせなかったと言われています」

 滋賀県長浜は桐畑氏の地元だが、長浜城にも、よく似た人柱伝説が伝わる。

「長浜一の美人だったおかねさんが人柱になったところに堀ができたので、そこを『おかね堀』と呼んで祀っていたり、秀吉時代の長浜城にいた京極家が人柱を探していたところ、たまたまそこにいた地元の漁師の家に娘が2人いるという。その姉妹のうち目の見えない妹を人柱に差し出そうという話になり、それを聞いた姉のお菊が、『それでは妹が可哀そうだ。私は目が見えていろんなものをもう見たから私が代わります』と言って人柱になったというんですね。今も長浜城の本丸跡のすぐ近くにお菊さんの供養のために建てられた祠と稲荷明神があります。

 一方、夜通し踊る『郡上踊り』で有名な郡上八幡(岐阜県)では、江戸時代に郡上八幡城の人柱になった女の子を〝およしちゃん〟という萌えキャラの可愛いイラストにしています。観光キャラクターとして、グッズまで発売されているというから驚きです。ツイッターでは、『人柱歴約400年の17歳☆今日もお城&城下町を護っとるよ!』なんて自己紹介していて、人柱という暗い話を明るいキャラに転換しているのはすごいなあと思いましたね」

 最後に、歴史家の河合敦氏に、伏見城に伝わる怖い「秘密」を聞いた。

「伏見城はなぜか縁起の悪い城です。秀吉の時代に大地震で倒壊、少し場所を移して再建されますが、その後、家康が会津征伐で伏見を留守にした隙に、関ヶ原の前哨戦で石田三成の大軍が攻め込んで伏見城は陥落、大部分が燃えてしまいます。留守を守っていた鳥居元忠、松平家忠ら数百人が切腹、戦死を遂げ、生々しい血染めの足跡や手形などが床板に残り、それらは、京都の養源院などいくつかの寺に供養のために天井板として奉納されて、『血天井』と呼ばれています」

 込められた怨念は、血天井となり、下界を見つめる。日本の城に込められた思いは、令和の今にも届いているに違いない。

 コロナ明け(?)の春到来! 日本各地のシンボルとして愛される城に佇み、その「秘密」に思いを馳せるのも悪くはない。

*写真は松江城

河合敦(かわい・あつし):65年、東京都生まれ。多摩大学客員教授。歴史家として数多くの著作を刊行。テレビ出演も多数。最新刊に「殿様を襲った『明治』の大事件」(扶桑社文庫)。

萩原さちこ(はぎわら・さちこ):城郭ライター。(一社)城組代表理事、(公財)日本城郭協会理事。執筆業を中心に、講演、メディア出演などを行う。著書に「城の科学」「地形と立地から読み解く『戦国の城』」など。朝日新聞デジタルほか連載多数。
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桐畑トール(きりはた・とーる):72年滋賀県出身。お笑いコンビ「ほたるゲンジ」、歴史好き芸人ユニットを結成し戦国ライブ等に出演、「BANGER!!!」(映画サイト)で時代劇評論を連載中。

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