19年4月、老朽化などを理由に退役となった日本の旧政府専用機2機。このボーイング747-400は「ジャンボジェット」の愛称で長年親しまれ、最後に製造された機体がこの1月、米国の貨物航空会社に納入されている。
国内線では見かけなくなったが、海外の民間機や貨物便では未だ現役として多くの機材が活躍。日本の旧政府専用機も退役後に売りに出され、なかなか買い手が現れなかったが、昨年5月に2機を同時に購入したのが米国の宇宙開発企業「ヴァージン・オービット」だった。
実は、現在このうちの1機は「宇宙ロケット打ち上げ専用機」にするため改造中。一般的に人工衛星などを搭載するロケットといえば、地上から垂直方向に打ち上げるイメージが強いが、もうひとつ、航空機で高空まで運んで発射する「空中発射方式」というのがある。同社が採用しているのはこちらの方法で、改造している旧政府専用機は〝空中ロケット発射台〟仕様の機材となるわけだ。
「ロケットは主翼に取り付けられ、高度1万メートル上空から発射されます。すでに系列のヴァージン・アトランティック航空から譲渡された機材1機が改造済み。『コズミックガール』という名前で運用されており、ロケット打ち上げの実績もあります」(航空ジャーナリスト)
ちなみにヴァージン・オービット社は、大分空港を宇宙港として利用するためのパートナーシップを20年に締結。ロケットの整備格納庫などを備えるアジア地域における宇宙基地としての役割が期待されている。
「地方空港ですがジャンボ機の離着陸可能な3000メートルの滑走路を備え、ロケットに欠かせない精密機器メーカーの工場が集まっている点などが選ばれる決め手になったようです。ただし、同社が1月に行った英国初となる打ち上げは失敗に終わり、大分空港での本格的な運用開始は遅れるかもしれません」(前出・ジャーナリスト)
それでも皇族や総理大臣を乗せて、長年世界中を飛び回っていた政府専用機の第二の人生が宇宙ロケット打ち上げ機というのはロマンがある。生まれ変わった姿で日本に凱旋する日を期待したい。
※画像はヴァージン・オービット社の宇宙ロケット打ち上げ機「コズミックガール」(同社公式ツイッターより)