高橋幸宏とジェフ・ベック「ロック界の至宝」秘話(2)ボン・ジョヴィが「俺を殴ってくれ」

 高橋幸宏と同じく、歌声のないインストで世界を魅了したのがジェフ・ベック。エリック・クラプトン(77)、ジミー・ペイジ(79)と並び、「世界3大ギタリスト」と称された。

「3人はイギリスのロックバンド・ヤードバーズでギターを務めた経歴で共通していますが、トップに立つまでの道のりが異なります。クラプトンは『ティアーズ・イン・ヘヴン』に代表されるように、あくまで歌とセット。ペイジはレッド・ツェッペリンという世界的バンドのギタリストとして名声を得ましたが、ジェフ・ベックはソロギター1本で勝負。今も日本のラジオでは『哀しみの恋人達』(75年)がよく流れていますが、こんなに長く愛されるギターのインスト曲というのは他に思い浮かびません」(音楽ライター・平賀哲雄氏)

 ジェフ・ベックも高橋同様、多くのミュージシャンから客演に招かれた。ジョン・ボン・ジョヴィ(60)が90年にリリースしたソロアルバム「ブレイズ・オブ・グローリー」で、ジェフ・ベックは収録曲11曲中7曲でギターを弾いているほどだ。

「レコーディングセッションの映像を見ると、ジョンがジェフ・ベックにあれこれと指示を出しているわけです。ジョンのアルバムなので当然ですよね。でも、ジョンはいろいろと細かい注文をつけた後に、『いつでも俺をぶん殴ってくれ』と言うんです。つまり、『俺がジェフ・ベックに偉そうに言うのはおかしいんだ』と。当時、世界で一番売れたバンドのボーカルが萎縮しながらセッションするシーンなんて、なかなか見られませんよ」(平賀氏)

 今回の訃報を受けて、クラプトンやペイジ、そしてロッド・スチュワートやミック・ジャガー、オジー・オズボーンといった超大物たちがSNSに追悼コメントを寄せた。

「ここまで崇拝され、愛されたギタリストは世界の音楽史を振り返ってもジェフ・ベックしかいないでしょう」(平賀氏)

 巨星が遺した歌声なき名曲は、これからも世界中に響き渡るだろう。

*週刊アサヒ芸能2月2日号掲載

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