韓国で高まる核武装論「なんと7割が賛成」 尹錫悦大統領も核兵器保有に言及

「核戦術の配備や独自の核(兵器)の保有も可能」——。

 韓国の尹錫悦大統領は外交部と国防部の業務報告を受けた席上で、ミサイルの乱発に加えてさらなる核兵器の保有をチラつかせる北朝鮮の脅威が高まった場合との条件付きながら、独自の「核保有論」をブチ上げた。
 
 もし本気の発言であれば関係各所から大きな反応があるはずだが、実際には世間であまりニュースになっていない。それでもハレーションを引き起こした。

「まずホワイトハウスが翌日にこれをけん制しました。アメリカの意思はあくまでこれまで通りの『朝鮮半島の非核化』にあるので、『米韓は共同で(北朝鮮の核の)拡大抑止を議論している』と釘を差すコメントを出しました。ただ米韓はそれぞれ年頭の1月3日に北朝鮮の脅威に対する共同計画と演習を行う用意があるとしていたので、尹大統領の発言はこれを指したものなのかもしれません」(全国紙記者)

 独自の核保有論については韓国国内からも「軽率」との声があがり、尹大統領が北朝鮮に対して発する「100倍、1000倍に叩ける大量報復能力」などと過度に緊張を煽るような発言を諫める論調が出ている。確かにまるで北朝鮮が使いそうな言葉使いだ。

 ただ、尹大統領が核保有論を持ち出す背景として、韓国国内での核保有論の高まりがあるのは確かだ。21年秋に行われた世論調査で、実に韓国人の7割が核保有を望むという結果が出ているからだ。

 確かに現在の世界情勢と韓国周辺を見渡せば、まずはもともと北朝鮮の脅威があり、そこに核を放棄したウクライナがロシアに攻め込まれ、さらに加えて隣国の中国が台湾に侵攻して極東の緊張が一気に高まる可能性がある。でも、調査が行われたのは21年なのでロシアのウクライナ侵攻以前のこと。そんな中で韓国国内に核保有論が高まっている中身を見てみると、やはり韓国人が脅威を感じているのはあの国に対してなのだった。

「当時は文在寅政権でしたが、その文大統領が中国の脅威を声高に叫んでいたということもあるのでしょう。同じ調査で『最も脅威のある国』という問いに対し、同じ7割の人が中国を挙げていたんです」(同)

 さてその中国ではゼロコロナが解除され、世界各国は中国からの入国者に検疫の強化を行った。当たり前のことなのだが、それでも中国は反発。そして「差別的入国制限措置」として、韓国を最初に制裁の対象に掲げた。もちろん韓国は中国の隣にあって米軍が駐留する同盟国であるが故の嫌がらせなのだが、韓国経済が中国に大きく依存しているという現実を〝人質〟に取るあたりがいかにも中国のやりそうなことだ。

(猫間滋)

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