昨今の日本経済の低迷を肌で感じると、日本が最も煌びやかで勢いがあったバブルの頃を懐かしく思い出してしまうアラ還のワタクシ。あの頃みたいに、もう一度、心も体もフィーバーしたいと思っている中高年世代も多いのではないだろうか。
そんなわけで今回訪れたのはディスコ。バブルの象徴的存在だったディスコ主催のスペシャルイベントで大フィーバーしようというわけだ。仕事上で知り合ったアラサーの知人から、「入れ食い状態です」と誘われたのがきっかけだった。
ところで、バブル期も今も、非モテなのは相変わらず。実のところディスコ自体初体験だったが、人生経験を重ねた今ならモテるかも。そんな思いを抱きながらいざ出陣と相成った。
服装はもちろん、バブリーな雰囲気のスーツ。レンタルだが、様になっていると思い込む。肝心の女性陣はワンレン&ボディコン。男女とも〝正装〟だ。バブルを懐かしむイベントのため、男女とも、私とほぼ同世代が目立つ。
最初会場は暗かったが、ユーロビートの音楽が鳴り始めると突如ステージが明るくなり、そこに10人ほどのギャル集団。よく見ると全員がアラフォーやアラフィフのオバサンばかり。樽みたいな体型の女性もチラホラ。とはいえ、体のキレは半端ない。
私と連れのアラサー知人は、ステージ近くの席に座り、とりあえず乾杯。そのうち人も増えてきてけっこうな混み具合に。気づくとすぐ近くにアラフィフ女子たち3人組の姿。全員膝が見える短いスカートを穿いている。
「アナタ、まだ若いわよね。全然懐かしくないでしょ? でもイイ感じ」
女性の1人が、私の連れのアラサー知人に話しかけたことをきっかけに、会話が始まった。アラサー知人は、ノリのよさげな2人にターゲットを絞っている模様。一方私は、もう1人の女子とバブル時代の懐かしネタを中心に話を展開。
「最近、ユーロビートなんて聴く機会ないよね」「そのミニスカ、昔着てたやつ?」と話しかけていると、一緒に来ていた女性が「ちょっとこの人はダメよ、旦那さんラブなんだから」。
私が狙っているように見えたのだろう。そしてなおも、「それに千里(仮名)はお嬢さんで、ディスコなんて初めてなんだから。そうだよね?」。
私もディスコは初めてなんだという話をしようと思っていた時、
「あれ? チャチャチャだ! え〜と、歌ってるの誰だっけ?」
千里さんの目が懐かしさで輝く。
「石井明美だよ。あと、プリプリとかも大好きだったな‥‥」と、その後はバブル期に流行していた歌の話で大いに盛り上がる。
「うち、親が厳しかったからホントにディスコとか初めてなの。でもその親も今は要介護。いったい何だったんだろうってね、最近思うんだ」
私がすかさず「遅れてきた青春だ」と言ったところで再び別の曲になり、お立ち台が活気づいた。
「ねえ、踊るの見せて」「いやだ、恥ずかしい」「そのためのミニスカじゃないの? じゃ一緒に踊ろう!」。
こんなクサイ台詞が出てきたことに自分で驚愕したが、全てはフロアの暗闇の成せる業。ところで千里さんだが、森高千里の目をかなり細くした上に、輪郭を四角にして、出っ歯プラス寸胴体型にしたみたいな外見。決して美形ではないが、しかし何ということか、そんな千里さんがイイ女に見えている自分がいた。これも同世代が集うイベントの成せる業だろう。
「オレ、この2人と別のとこで飲み直しますわ!」
背後から連れのアラサーの彼が私に声をかけて、会場を後にする。両脇でアラフィフ女性と腕を組んで両手に華という状態だった。
一方、私と千里さんはというと、その後30分くらい会場にいて別れた。LINE交換をしたので、今でもたまに連絡を取り合うが、話題はバブルあるあるがメイン。もしも今度会えば、艶っぽい展開になるかもと期待しながら過ごす毎日。果たしてどう転ぶのか。
【データ】
出費:参加費1万円+交通費+スーツレンタル代5000円
女性:お嬢様気質なアラフィフ女性
総合:☆☆☆(5段階評価で3)
モーリス輪島:派遣労働とわずかな昭和ネタ執筆で生活する60歳。生活費を削ってまでも出会いにつぎ込むストロングスタイルなナンパに定評がある。
*画像はイメージ