法の抜け道を是正し厳罰化「隠し撮り犯」が震える「撮影罪」の画期的中身とは?

 スマートフォンや高性能小型カメラの普及で近年急増中の「隠し撮り」。警察庁のまとめによると、21年にこうした行為で検挙されたのは、過去最多の5019件にものぼる。ところが、検挙しても大半が不起訴になるか、起訴されても罪状は微罪程度なのだという。

 そうした背景もあり、法務省は10月24日の法制審議会で新しい刑法の試案を提出した。その名称は「撮影罪」。いったいどんな罪か。

「この試案が画期的なのは、隠し撮りが刑法で罰せられるという点です。実は、現状では隠し撮りそのものを取り締まる法律はないのです。通常は迷惑防止条例違反が適用されることが多く、罰則は『6月以下の懲役又は50万円以下の罰金』となっています。しかし、警察庁は公表していませんが、実際には7〜8割が不起訴。起訴されても懲役刑はまずありません。また、同条例では公共交通機関や公共での隠し撮り行為を対象とする自治体が多く、それ以外の場所だと不法侵入や、罰則がより軽微な軽犯罪法でしか取り締まれなかった。さらに飛行機内での隠し撮りの場合、フライト中だと適用すべき条例の都道府県の特定が困難で処罰が難しい。撮影罪ではそうした点も解消されるのです」(大手紙社会部記者)

 罰則も、試案では『3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金』と、大幅に強化された。ちなみに拘禁刑とは、今年6月に成立した刑法等の一部を改正する法律によって新しくなったもの。これまでの懲役刑、禁固刑が廃止され、すべて拘禁刑となった。

「また、現状では逮捕しても押収できるのは、犯人が撮影した動画、画像だけです。コピーしたものは押収できず、検挙されてもクラウド上などにコピーを隠し持っている盗み撮り犯もいるため、法の抜け道となっていました。しかし、試案ではこれも押収の対象としています。この撮影罪が施行されれば、不起訴になる割合は減り、拘禁刑に処せられるケースも出てくる見込みです」(前出・社会部記者)

 新しい「撮影罪」が卑劣な行為の撲滅に役立つことを願うばかりだ。

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