つい先日、東京地方裁判所の法廷に立ったのは無職の男性。彼にはかつて女性タレントへの「脅迫容疑」で逮捕された“前科”が…。同様の迷惑行為で裁かれることになった彼は、法廷で何を語ったのか。お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火がリポートする。
2019年に女性タレントのTwitterアカウントに脅迫するようなリプライを送ったとして執行猶予付きの判決を言い渡された男が、再び同じ女性タレントにメッセージを送り続けていたという事で、東京地裁で初公判が行われました。
罪名は迷惑防止条例違反。被告人は無職の男性。
起訴されたのは、今年の4月~6月の間、11回にわたって女性タレントのInstagramアカウントにダイレクトメッセージで平穏を害する内容の文章を送ったという内容です。
法廷では被害者である女性タレントは匿名で「Aさん」と呼ばれていて、被告人質問でも名前は明かさないようにして進められました。
弁護人「こういう事をした理由は何ですか?」
被告人「前回の事件はニュースで報道されたんですけど、それでAさんに関するネット掲示板に私のことが書き込まれまして。それが名誉毀損に触れるような記載で、これはAさんが書いたのかなと」
弁護人「どんな内容なんですか?」
被告人「警察から護送される時の写真とか、ハゲとかの書き込みが繰り返されまして。あとAさんに謝れという内容も多く、Aさんの周りの関係者だなと」
弁護人「Aさんが掲示板に書いたという根拠は?」
被告人「書き込みの時間とAさんのTwitterのツイートの時間が近かったので疑いました」
弁護人「それだけで間違いないと確信したんですか?」
被告人「随分マヌケな話です…」
完全なる思い込み。でもネット上ではAさんのファンにイジられてたのかも知れませんね。ってか自分の事が書かれててイヤな内容なら、わざわざ掲示板を見にいかなきゃいいだけなのに。しかもAさんが自分に執着してるって考えるかねぇ。向こうにしてみれば被告人は忘れたい存在でしょ。
続いて検察官からの質問です。
検察官「またやったら刑務所に行くとは思いませんでしたか?」
被告人「思いませんでした。冷静さを欠いていました」
検察官「掲示板にさっき言ってたような書き込みがあったのは事実なんですけど、それでAさんに対して行動を起こすのは変ですよね?」
被告人「冷静さを欠いてました」
検察官「前回の裁判でAさんに対してメッセージを送信しないという約束しましたよね?」
被告人「忘れてました」
検察官「もうAさんには接触しない?」
被告人「懲役刑は覚悟してますんで」
と質問の答えになってない被告人。すると検察官はちょっと語気を強めて最後の質問です。
検察官「刑務所から出所して送信しませんね!約束出来ます?」
被告人「…ん?…何もなければや・り・ま・せ・ん・の・で!!」
と逆ギレして質問終了。そんなに怒らなくても。ってか、何かあったら再びやるって予告にも聞こえるけどねぇ。なんか心配です。
最後は裁判官からの質問。
裁判官「執行猶予中はどんな気持ちで生活してました?」
被告人「極力マジメに、脅迫とかしないように、と」
裁判官「掲示板に自分のことが書き込まれてるの見て、すぐ行動したんですか?時間経ってから?」
被告人「すぐですよ、すぐ!いったい誰がやってるんだとね」
裁判官「カーッとなるんですか?」
被告人「短気なところがあるんで」
それは検察官との質疑応答でわかってますけどね。
後日、被告人には実刑判決が言い渡されました。執行猶予中だから当然だけど。とりあえずAさんの生活はしばらく平穏なはず。それにしても、こんな被害妄想みたいなのを膨らませた人に攻撃されなきゃいけない職業なのかね、タレントって。SNSで気軽にメッセージが送れる時代だからこそ、内容はくれぐれも慎重に。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。12月31日には東京・スズナリにて恒例イベント「お笑い裁判の歩き方2020」を開催予定。