その一言で食べる楽しみが復活した。脳がニオイを覚えているようで、退院したら最初に食べたいと楽しみにしていたのが、お気に入りの町中華の「もやしそば」だった。地域でナンバーワンの店。胃を全摘出では当然、完食できるはずはなく、汁を少しすすって麺を2、3本食べただけだったけど、退院できて外に出られたのと、「食べたいのはこれだった!」という感動で、喜びにあふれた。匂いをかいだだけでも十分だった。
実は、町中華の前にケンタッキーにも行ってチキンを一切れ食べようとしたけど、無理だった! でも、食べられなくて当然、入院中は流動食しか食べてないのだから(笑)。
術後、担当医に「健康な人の1人前を食べても、3分の1しか栄養を吸収できません」と説明された。胃がないと、食べものを溜めるところがないので、食べている途中に苦しくなってしまうことがあるし、まさか、3人前を一度には食べられない。今は、かなり食べられるようになってきて、ありがたいことだ。
日によってメニューに変動があるけど、朝食は基本的に自宅で。トマトとアボカドと生野菜のサラダ。いただきもののキュウリやゴーヤを酢漬けにしてもらったピクルス。あとは、卵1個分の卵焼きと、低糖パンを半切れ。最後に季節のフルーツ。昼食は、とんかつや寿司、魚の定食や洋食が多いかな。
昼食後、事務所に戻って食後のデザートがわりにコーヒーとせんべい、フルーツなどを食べる。おやつには、いただきもののどら焼きやクッキーなどを食す。
球場で解説の仕事がある日は、崎陽軒のシウマイ弁当などや、まい泉のヒレかつサンドなんかを、放送席で軽くつまんだり、本番中は飴を舐めながらコーヒーを飲んでコメントする。
自宅に戻ったら、本格的な晩ごはん。ステーキやしゃぶしゃぶ、焼き魚や煮物などを食べる。もちろん、外食することも多い。旨い店で食べるのは楽しみでもある。
寝るまでの時間は、コーヒーや烏龍茶を飲みながら、せんべいやスルメイカなどを口にする。
個人的な見解だけど、インテリと金持ちの人たちの中には、体育会系のガツガツ食べるヤツを、ちょっと見下す傾向があるような気がする。少食こそが正義と思っているみたいだが、俺は死ぬまで食べたいだけ食べ続ける。食は命の源。読者諸兄も、好きなだけ食い続けろよ!
江本孟紀(えもと・たけのり)野球解説者。1947年7月22日生まれ、高知県出身。「プロ野球ニュース」「野球中継」(フジテレビ)、「ショウアップナイター」(ニッポン放送)、サンケイスポーツでの評論を中心に活動。