河川氾濫や土砂災害をもたらし、東北地方を中心に甚大な被害を与えた8月の集中豪雨。特に鉄道網への影響は深刻でJR東日本の磐越西線や米坂線、奥羽本線、津軽線、五能線、花輪線のほか、第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道は、今も一部区間が不通のまま。代行バスで乗客の輸送を行っている。
そうした中、9月20日には国土交通省東北運輸局が「津軽線・五能線・花輪線の災害復旧に係る事業間連携に関する地方連絡調整会議」を開催。JR東日本盛岡支社・秋田支社と当該3路線の広域自治体(青森県・秋田県)と沿線自治体、東北森林管理局、東北地方整備局による被害状況の共有や意見交換を行った。
東北運輸局の担当者は、「早期復旧へ向けて、道路や河川などを各事業間で協力しながら復旧工程を調整していく」と語ったが、工事はまだ始まってすらいない。沿線住民からは「対応が遅すぎる!」といった苛立ちの声もあり、ネット上では《このまま廃止もありそう》なんてコメントも見かける。
「実際には今後の方針も含め、何ひとつ決まっていない状況です。もともと今回話し合われた3路線は、JR東日本管内でも有数の赤字路線。なによりコロナ禍で業績が大幅に悪化した同社には余力がなく、国も自治体も本音では工事費負担を逡巡しているはずです。16年に台風で橋脚が流失したまま復旧を断念したJR北海道の根室本線の東鹿越〜新得間は廃止に向けた話し合いが現在行われており、正式決定も時間の問題です。同じ事態にならないとは言い切れません」(鉄道ジャーナリスト)
ちなみにJR東日本は今年7月、管内の赤字路線の経営データを公開。それによると20年度における津軽線の不通区間の1日の平均通過人員はわずか107人。五能線と花輪線はこれよりは多いが、それでも運行すればするほど赤字が膨らむ状況には変わりない。
「特に最近は気候変動の影響などで豪雨による水害が頻発しています。橋脚流失や路盤流失による不通を機にそのまま廃止という事例が増えれば、これまで以上のハイペースでローカル線が消える可能性があります」(同)
復旧にも莫大な費用がかかり、事態は思った以上に深刻。困っている地域住民のためにも、なんとか開通してほしいものだ。