国名や都市名が変更されることは世界的に珍しいことではない。今年に入ってもウクライナの首都がキエフからキーウ、隣国モルドバの首都もキシニョフからキシナウに改名されている。これは旧首都名がロシア語だったため、ウクライナへの軍事侵攻に反発する形での変更だったが、なかには一度変えた都市の名前を元に戻したケースもある。
現在、徴兵逃れのために多くのロシア人が国境を超えて、流れ込んでいるのが中央アジアのカザフスタン。
このカザフスタンは9月17日、首都の名称に関する憲法改正を行い、「ヌルスルタン」から19年まで使っていた「アスタナ」に戻したと発表している。先に挙げた両国同様、旧ソ連圏の国だが、こちらは親ロシア国家。同国への反発が理由でないなら何が原因なのか?
「日本ではネット上で《名前がなんとなく卑猥》や《首都の名前がそもそもスベってる》など字面的に似た『ヌルヌル』と誤読してイジる書き込みが相次ぎ、妙な盛り上がりを見せました。もちろん、これを面白がったのは世界中で日本人だけ。実は、このヌルスルタンは初代大統領の名前なんです」(全国紙記者)
大統領のフルネームは「ヌルスルタン・アビシュリ・ナザルバエフ」で、ソ連崩壊後による分離・独立を果たした1991年から2019年にわたって大統領を務めた“カザフスタン建国の父”。豊富な地下資源をバックに著しい経済成長を遂げ、教育やインフラ整備にも力を入れた優れた為政者として評価されているが、一方で独裁的な国家運営だったと批判の声もある。
「大統領退任後も国家安全保障会議議長(※22年1月に辞任)として院政を敷いていました。しかし、自分の家族や親族、側近などが国家の要職に就き、権力と莫大な資産を独占していたことに国民が反発。大規模な反政府デモに発展し、ヌルスルタン氏は失脚して政界引退に追い込まれた。当然、彼の名前がついた首都も国民のから評判は最悪。そこで、現在のトカエフ大統領が支持率アップのためにアスタナに戻したというわけです」(同)
歴史上の偉人ならともかく、存命中の人物の名前を首都名にするのもどうかと思うが‥‥。