「あまりにも落差がありすぎて、頭がクラクラするほど。いったい何を考えているんだ!」
9月22日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会見で一喝したのは「報道特集」(TBS系)の金平茂紀キャスター(68)だ。断罪はさらに続いた。
「最初に謝罪したが、実際に過去の教団の加害行為に対し、ひどい目にあった人への謝罪がなかった。実際に被害になった方になぜ詫びないんだ。真摯な反省はどこにあるんだ」
その後も「過度な献金とは誰が判断する」「この会見は組織防衛にしか見えない」といった厳しい質問と批判に、壇上の教会改革推進本部・勅使河原秀行本部長は手指を震わせる。同席していた教団の顧問弁護士・福本修也氏も苦虫を噛み潰したように、「もう切ってください」と金平氏に退席を促したのだ。
追及の手を緩めないのは番組も同様だ。これまで「旧統一教会と政治」「〝元信者〟妻たちが語る旧統一教会の実態」「新たな手法で献金 信者家族が証言」など、毎週のように特集を組んで、教団の実態に肉薄しているのだ。
他の追随を許さぬ骨太報道の源泉は金平氏の経歴にあった。77年にTBS入社後は「筑紫哲也NEWS23」でもオウム真理教事件などを取材した報道畑一筋の古株なのだ。
ジャーナリストの有田芳生氏はこう評価する。
「番組スタッフに聞くと、これまではいわゆる『ネトウヨ』からの批判が激しかったが、今度の旧統一教会特集に関してはまるで静かだということです。やはり実感として、92年の統一教会の合同結婚式、オウム真理教事件などを現場で追及してきた人がいるかいないかが決定的に報道番組の質を決めることになるのだと思います」
鈴木エイト氏もエールを送る。
「この機会に旧統一教会問題をしっかり報道していこうと、チームを組み本気で取り組んでいるのだと思います。永田町では私があたかもサギ師であるかのような怪文書が出回っているようですが、局にも教団関連団体などから『反社会的団体とは何か?』など公開質問状が来ているようです。番組は今後もキャンペーンを続けていくと思うので私も全面協力していきたい」
89年の坂本弁護士一家殺害事件の引き金となったTBSビデオ問題では、筑紫哲也氏が「TBSは今日死んだに等しい」と局を断罪した。
33年にわたるカルト教団告発の末、金平氏は9月末をもってキャスターを降板する。番組の顔は変わっても、「筑紫イズム」を継承してほしい。
*「週刊アサヒ芸能」10月5日号掲載