バイデン大統領がアルカイダ最高指導者の殺害を決行した理由とは

「正義は下された。このテロリストはもうこの世にいない。世界中の人々はもうこれ以上恐れる必要はない!」

 バイデン米大統領が国民向けのビデオ演説で、国際テロ組織アルカイダの最高指導者である、アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したと発表したのは、1日(日本時間2日)のこと。

 ザワヒリ容疑者は「9.11」同時多発テロに深く関与したことで、11年5月に米軍特殊部隊によって殺害されたビンラディン容疑者の後継者として、アルカイダを率いてきた“最後の大物”とされる人物。

「米メディアによれば、政府は今年に入り、ザワヒリ容疑者がアフガニスタンの首都・カブールに潜伏しているとの情報を把握。CIA(米中央情報局)が監視を続け、バイデン氏に逐一報告されていたといいます。この1カ月で作戦が本格化し、7月下旬にバイデン氏が作戦実行を最終承認。そして31日午前6時過ぎ(現地時間)、同容疑者が建物のバルコニーに出たところをドローン攻撃により殺害された」(全国紙記者)

 ドローンから発射されたミサイルは2発。弾頭部には、弾薬の代わりに「ニンジャ・ブレード」といわれる回転する刃が取り付けられており、ピンポイントで対象を襲うため建物に損傷はなく、一般市民にも被害はなかったという。

「ザワヒリ容疑者は、エジプト出身で元外科医。アルカイダには初期から参加している最高幹部の1人で、ビンラディンも全幅の信頼を置き、“右腕”として活躍。ビンラディン死去後はこのザワヒリ容疑者が、結束力の低下するアルカイダの“精神的理論的支柱”を担ったとされています」(同)

 同時多発テロの前年、イエメン沖で17人が死亡した「米駆逐艦自爆テロ」事件の主導者として、米政府から2500万ドル(約32億5000万円)の懸賞金をかけられていたザワヒリ容疑者。専門家によれば、その状況で、狙ってくれと言わんばかりにバルコニーに姿を現すなど、まずありえないというのだが‥‥。

「アルカイダが弱体化する中、ザワヒリ容疑者は昨年、タリバンが支配するアフガニスタンに移ったとされますが、タリバンは現在、内部で対立。彼はその一派に匿われていたとみられますが、CIAは相当早い段階で潜伏情報をつかみ、殺害するタイミングをうかがっていたといいますから、金銭目的でリークされた可能性は高いでしょう。アフガンに入らなければ殺害は成功しなかったと言えるかもしれません」(同)

 むろんこの作戦が、11月に控える中間選挙に向け、テロとの戦いのアピールになったことは間違いない。だからこそ、バイデン氏は新型コロナウイルスに感染、隔離されながらも、何がなんでもこの作戦を成功させるべく陣頭指揮を執ったのではないだろうか。

(灯倫太郎)

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