世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「秋山がヤクルトに一泡吹かせる!」

 秋山翔吾の広島入りには驚いた。レッズに続いて、パドレス傘下3Aを自由契約となり19年以来の日本球界復帰。古巣の西武か、条件のいいソフトバンクか、と思っていたら、まさかの広島やった。鈴木球団本部長が「えっ、マジって言ってしまった」と連絡を受けた時の様子を明かしていたが、誘った球団もビックリの選択。メジャーでは7億円以上の年俸をもらっていたようで、お金はそんなにいらんかったのかも。条件は3年総額5億円程度らしい。入団の決め手となったのは、残り524本の日米通算2000安打への思いやったのと違うかな。

 シーズン150安打ペースを3年で450。今年の分と含めると、順調に行けば2025年には2000本安打を達成できる計算になる。鈴木本部長との会話の中でも2000本安打の話題があったというし、情に厚い広島なら達成しやすいと思ったのかな。新井貴浩が阪神から広島に出戻って達成した例もある。親交のある會澤や菊池からもベテランを大事にするカープのチームカラーを教えてもらっていたと思う。ソフトバンクは栗原や上林らが故障しているから、今は重宝してくれても、2、3年後は外様として冷たい扱いを受けてもおかしくなかった。

 34歳はまだまだ老け込む年齢やない。2015年にシーズン216安打のプロ野球記録を樹立した打撃だけでなく、走って、守れてと3拍子そろっている。広島の暑い夏にランニングで体の芯から汗を流せば、十分に輝きを取り戻すと思う。やっぱり試合に出続けることで結果を残してきた選手やから、アメリカでの出たり出なかったりの起用ではリズムをつかめなかったのかもしれん。ただでさえ異国の地で、あらゆる面で慣れるのが大変やったと思う。

 僕がいつも言うように、ケガせずに結果を残すのが本物のプロ。そういう意味では、秋山は2014年9月から、メジャー移籍前年の2019年まで、パ・リーグ歴代1位の739試合でフルイニング出場を続けた「無事コレ名馬」の代表選手。イニング間の攻守交代のダッシュも含めて、試合中の攻守の動きで自然と体を鍛えていたはず。誰にでもある好不調の波も、出続けていれば微調整できる。メジャーではスタメンから外れることが多く、肉体的にも精神的にもきつかったんやろな。

「3番・センター」として期待通りに働けば、広島がヤクルト追走の1番手になる。去年までの4番・鈴木誠也が抜けて、ただでさえ打線は苦しかったが、6月上旬に西川が離脱。交流戦はチーム打率2割1分7厘の貧打が原因で、5勝13敗の最下位となった。リーグ戦再開後は、お得意様の阪神、DeNAを相手に上昇気流に乗って勝率5割復帰したばかり。今回のニュースはファンだけでなく、チームにも大きな勇気を与えるものとなった。

 真面目な選手と聞いているし、小園ら伸び盛りの若い選手にとっていい見本になるのは間違いない。秋山のシュアなバッティングを目の前で見られれば最高の教科書となる。ヤクルトが独走状態の中でのサプライズ補強。もともと先発投手は大瀬良、森下、九里、床田と力のある投手がそろっている。秋山が加入の打線の奮起次第では、2位争いに限らず、ヤクルトに一泡吹かせる存在となってもおかしくない。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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