岸田首相は6月26〜30日にドイツで開催されたG7サミットとスペインでのNATO首脳会議に出かけて、前例としてはあまりない大型選挙中の長期外遊を終えて帰国した。
もちろん国際的に大きな議題はウクライナ情勢と中国の台頭への対応だが、日本と韓国の場合はまた別にもあり、過去最悪と言われる日韓関係にあって初めて両国の新たなトップの顔合わせだった。
「NATO首脳会議が行われている29日にバイデン米大統領を交えた3者会談は実現しましたが、日韓首脳会談に関してはいわゆる徴用工問題で韓国側が解決策を示していないとして日本側が拒否。結局、実現することなく両者は帰国しました」(全国紙記者)
日本が半導体素材など3品目の輸出規制を発表したのが2019年7月1日なので、そこから丸3年が経過したことになる。韓国の尹錫悦(ユンソニョル)大統領は日本との融和を望んでおり格好の機会だったのだが、日本国内は参院選真っ只中なので安易な妥協は弱腰と見える。タイミング的に機が熟しているとは言い難かった。
そこで両者は、首脳会議の2日間で5回顔を合わせる機会があったというのだけでニュースになる始末に。傍から見たらまるで子供ゲンカのようだ。
それでも28日に岸田首相が尹大統領に声をかけて3〜4分間だけ話す場面があったが、これも韓国の大統領室が発表するまで日本側からは説明がなく、ようやく29日になって木原誠二・官房副長官から「ごく短時間」と「ごく」を強調する形で発表するという上から目線。尹大統領が「両国の関係を発展できるパートナーになれると確信した」と話したのとはかなりの温度差が感じられる。
さてそんな尹大統領だが、NATO首脳会談では他にも散々な憂き目に遭っていたようだ。
「まずNATOのホームページにパートナー国の首脳が集まった写真が掲載されたのですが、尹大統領がただ1人目をつむっていた(のちに韓国大統領室の要請により写真を差し替え)。またバイデン大統領と握手した際も、バイデン大統領は尹大統領と握手はしつつも顔はブルガリアのルメン・ラデフ大統領の方を向いている写真が使われて、韓国国内では『ノールック握手』と呼ばれて話題になっています。さらにNATOのストルテンベルグ事務総長との間で予定されていた会談は、尹大統領が30分待たされた末に延期という待ちぼうけを食らう場面がありました。最終的に会談は実現しましたが、いずれも韓国国内では『非礼だ』との声が上がっています」(同)
一方の岸田首相、もともと外交が得意ということで長く選挙戦を不在にしていたが、ロシアや中国そして韓国に毅然とした態度を示せたということで、今回の外遊を参院選を勝利に導く大きな土産と出来るか否か。
(猫間滋)