血圧の「新常識」降圧剤は絶対に飲むな!(3)高血圧は「基準」が作った病気

 血圧の薬は一度飲んだら死ぬまで飲み続けなければならない、とも言われるが、それは真実なのだろうか。

「日本初の『薬やめる科』の医師が教える薬の9割はやめられる」(SBクリエイティブ)の著者である、松田史彦氏(松田医院 和漢堂院長)のもとにも、高血圧心配性の患者が数多く足を運んでくるが、

「ある男性患者さんは30代後半から血圧が上昇し、総合病院の循環器科に通院していました。その頃の血圧は180/100mmHg程度で、処方されていたのがアムロジピン5mg 2錠、ニフェジピン20mg 4錠、オルメテック20mg 1錠、ビソプロロールフマル酸5mg 1錠、トリクロルメチアジド2mg 1錠、全部で5種類、合計9錠の血圧の薬を飲んでいた。正直、驚きました。患者さんにしてみれば『大病院の先生が言うことだから』と120%信用して飲んでいたのでしょうが、常識的に考えて、こんなにたくさん飲んだら副作用が出ないわけがない。特にアムロジピンとニフェジピンはカルシウム拮抗剤で、血圧を下げる力が強いのです(血管内でカルシウムの取り込みを抑える効果がある)。しかも後者にいたっては、1錠だけでも血圧がどんと下がるのに、容量の大きい20mgを4錠も処方されていたんです。恐らく、処方箋を書いた医師は血圧の値しか見ていなかったのでしょう。降圧剤を投与しても血圧が下がらない。1つ足してみよう。まだ下がらない、ではもう1つ‥‥となったことは想像にかたくありません」

 この男性患者は降圧剤の副作用で脈拍数が1分間120回という頻脈を起こしたことに加えて、腎臓の機能も低下。さらに血糖値が高く糖尿病が疑われる状態だったにもかかわらず、その診断さえされていなかったという。

「つまり、血圧以外のことは全て見逃されていたわけです。でも実は、こういったケースは氷山の一角でしかありません。ちょっと血圧が高かっただけで多くの降圧剤を出されて、体調を崩してうちに来る患者さんは実に多いのです。血圧の薬は『拮抗』『阻害』『遮断』という名前どおり、人間の生理反応を抑えて血圧を下げるもの。言い方を変えれば、全身の細胞を犠牲にして、体を多大なストレスにさらしているということです」(松田氏)

 にもかかわらず、コロコロ変わる「基準」によって、患者が増加していき、使用される降圧剤の量がさらに増えていくならば、これはたまったものではない。

 松田氏によると、今回のガイドライン改正以前にもWHOが78年に、年齢に関係なく「160/95mmHg以下が正常」と定めた時や、99年にやはりWHOと国際高血圧学会が基準をさらに引き下げ、「139/89mmHg以下が正常」とした時など、海外の動きに合わせてそのつど、日本が基準を変えてきたことを指摘したうえで、

「基準とは、その程度のものと考えるべきです。一般的に高齢になるにつれ、血圧が上昇することは医学の教科書にも書いてある超常識。それを無視した基準値には何の意味もない。つまり高血圧症は、基準が作った病気と言っていいんです」

ライフ