市原教授いわく、そんな血圧に影響を与え、「血圧リセット」の救世主となるのが血管拡張ガスであるNO(一酸化窒素)だという。
「一酸化窒素と聞くと『えっ、有毒ガス!?』と勘違いする人もいますが(笑)、実はNOは体のあらゆる場所で産生され、体の機能が正常に働くよう促してくれるもの。我々の体はこのガスのおかげで血管が柔軟になり、血液量に合わせて血管がしなやかに収縮、正常な血圧をキープできるようになっているんです。ただし、NOは作られても3~6秒ほどで消失してしまうので、血流をよくして血管を絶えず刺激することで、より多くのNOを産生する必要があるのです」
ではNOを多く産生させるためには、どうしたらいいのか。さっそく市原教授が推奨する「食べ方」「座り方」「眠り方」について解説していこう。
【1】減塩ではなく、「NO食」で塩出し力を強化する
高血圧対策といえば、真っ先に思い浮かぶのが「減塩」。だが、塩分が直接血圧を上げるわけではない。真の原因は、塩分を排出する腎臓の働きが追いつかなくなるからだ。
「腎臓は血液中の塩分(ナトリウム)を調整する働きを持ち、血圧をコントロールする臓器ですが、尿で1日に排出されるナトリウム量には限界があります。しかし、腎臓の塩分排出装置に影響を与えるカリウムを摂ることでナトリウムの排出量を増やしてくれ、結果、血圧の上昇を防いでくれるんです」
カリウムは野菜や果物のほか、こんぶやひじきなどの海藻類、豆類や根菜類に多く含まれているが、
「野菜の中でも高い抗酸化力とNOのもととなる硝酸塩を多く含むのが、ほうれん草。ただ、加熱することで成分が抜けてしまうので、食べるなら生サラダがお勧めです」
一方、高血圧予防に役立つのがアミノ酸の一種であるGABA(ギャバ)を豊富に含むナス。これは逆に蒸したり焼いたりと、60度の加熱処理でその成分を多く取り入れることができるという。交感神経を鎮めてリラックス効果や安眠効果が得られる有効成分「コリンエステル」の含有量も、他の野菜の1000倍以上となっている。
それぞれの効果的な調理法を知り、酒のつまみに加えてみるといいだろう。
【2】飲酒後は炭酸水と緑茶で血管と肝臓を守る
適量のアルコールはNOの産生を促す。しかし、多量の飲酒は、逆にNOを産生する内皮細胞を傷つける可能性があるという。
「血圧の上昇を防ぐには、ゆっくり時間をかけて飲むことが大事。さらに飲酒後には、アルコールの分解を早め、肝臓が傷ついて血中に出てくる酵素(ASTとALT)を抑える飲み物、例えば炭酸水や緑茶などを飲むといいでしょう」
【3】1分正座と30秒足踏みで血管を強くする
よく電車内で見かけるが、長時間の座りっぱなしに加えて、足を組み続けるのもNGだ。下半身の血管の圧迫を招き、場合によっては10mmHgもの血圧上昇を招くこととなる。この滞留を逆に利用したのが、「1分正座」のあとに「30秒足踏み」を行う血圧リセットトレーニングだ。
「正座をすると足がピリピリとしびれるのは、体の重さにより大腿部の太い動脈が押しつけられて血流が悪くなるため。ところが正座を崩すと、塞がれていた血管が解放され、一気に血流が流れ始める。この血液のスピードが血管内皮細胞を刺激し、NOの産生に一役買うというわけです」
下半身には「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎや大腿四頭筋など、たくさんの血液を保有する大きな筋肉が集中している。ジョギングなどの有酸素運動で下半身を動かす際は、
「ずっと走り続けるよりも、途中でインターバルを入れて、呼吸を整えながら運動したほうが、NOの分泌が促され、血管拡張反応も2倍になります」