吉野家の親子丼、大好評のウラに「アンダードッグ効果」と「開発10年」の謎

 牛丼チェーンの吉野家が4月19日に親子丼の販売をスタートした。SNS上には実食したユーザーから親子丼の写真が続々とアップされ、《親子丼たしかに美味い》《親子丼漬けにされそう…》など、その味を絶賛するコメントが多く見受けられた。

「吉野家といえば、16日に元役員の男性が大学の社会人講座で、若い女性向けマーケティングについて『生娘をシャブ漬け戦略』と発言。さらに男性利用客についても『家に居場所がない』と話したとされ、吉野家愛好家から大バッシングを受けました」(経済ライター)

 吉野家の対応は早かった。取締役を務めていた問題発言の主を18日付で解任。プレスリリースでは、「本日以降、当社と同氏との契約関係は一切ございません」との声明を発表した。

 さらに19日に行われる予定だった新商品・親子丼のCM発表会は中止。会見には、タレントの藤田ニコルが出席する予定だった。もし開催されていれば、情報番組などで大々的に取り上げられていたはずだった。

「PR活動を自粛したことで、かえって話題性が高まった一面もあります。新商品発表会の中止を伝えるニュースには、『親子丼の開発に10年かけた』『2012年に販売した親子丼を10年かけて復活させた』など、『開発10年』を印象付けるワードがあり、消費者の関心を集めました。SNS上では吉野家の元役員やマーケティング戦略を批判する声が殺到する一方で、親子丼の売れ行きを懸念するコメントも見られました。しかし、フタを開けてみれば、販売初日に親子丼の味を絶賛する声が多くアップされました。おそらく、弱いチームや立場の弱い人をつい応援してしまう“アンダードッグ効果”(負け犬効果)が影響しているのではないでしょうか。これは同情マーケティングとも呼ばれ、過去にはプリンやケーキを大量に誤発注してしまった店舗がSNSで危機を訴えたところ、数時間で完売したという出来事もありました」

 気になる親子丼のお値段は並盛で437円(税込)。一概に比較はできないが、ライバルのなか卯が同じ並盛を480円(税込)で提供していることから、割安感もあるかもしれない。吉野家の親子丼を実食したグルメライターはこう話す。

「大ぶりの鶏肉は食べ応え十分で卵はトロトロ。10年前に食べた際はここまで絶妙な半熟ではなかったと記憶しています。開発に10年をかけたのは、誰が作っても美味しい親子丼が作れるオペレーションに秘密があるのかもしれません。公式サイトを見たところ、主役である鶏肉は外国産のようですが、ここまで美味しい鶏肉の仕入れルートを確立するのもかなりの年月を要したのではないでしょうか」

 機会があれば、開発10年の味を体験してほしい。

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