矢野阪神に「日本人クローザー」が育たない切実な事情

 矢野阪神が浮上のきっかけを掴むには……。

 対戦相手のDeNAから新型コロナウイルス感染者と複数の濃厚接触者が出たのは4月7日。球団スタッフを含め、計11人がチームを離れる緊急事態となり、同日の阪神対DeNA戦は中止が決定された。

「感染防止の観点からすれば、中止はやむを得ません。阪神にとっては、救援投手陣を休ませ、再整備する時間になればいいんですが」(在阪記者)

 開幕戦からの連敗は、救援投手陣の不振が原因だ。クローザーを予定して獲得したカイル・ケラーの炎上がいちばんだが、こんな指摘も聞かれた。

「藤川球児がメジャーリーグに移籍した2014年以降、クローザーは外国人投手が務めてきた」と——。

「阪神渉外担当者の外国人投手を見極める眼力には定評がありました。バッターでは失敗したほうが多いかもしれませんが」(球界関係者)

 クローザー不在、あるいは、その不調がチームの勝敗に直結する。矢野燿大監督もそのことを再認識させられたはずだ。
 
 藤川球児のあとはオ・スンファン、オ・スンファン退団後はマルコス・マテオ、マテオと同時獲得したラファエル・ドリスも最多セーブのタイトルを獲得している。ロベルト・スアレスが「トラの守護神」となったのは、ドリスが退団した翌20年からだ。
 
 渉外担当者の外国人投手を見極める眼力が「近年のトラを救ってきた」と言っても過言ではない。まだ結論を出すのは早いかもしれないが、今回は失敗してしまったということだろう。渉外ルートを変更したとの情報は聞かれなかったが…。

「メジャー時代のケラーは『特徴のないピッチャー』とも言われていました。直球も目を見張るほどの速さではない、カーブも大きな落差があるわけでもない。でも、なんとなく相手打線を抑えてきた、みたいな」(在米ライター)

 また、ケラーとの交渉が明るみに出た昨年12月、メディア対応したのは、嶌村聡球団本部長だった。同本部長の口から「スアレス投手の代替。そういう期待感を」などの言葉も出ており、矢野監督も使わざるを得ない状況だったのかもしれない。

 目下、矢野監督は4年目の湯浅京己をクローザー起用しようとしている。藤川以来、生え抜きの日本人クローザーは育っていない。近代野球に欠かせない守護神の育成を外部補強に頼りきってきたツケも、開幕連敗記録を更新させた一因と言えそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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