「ガンプラ」が店頭から消えた!? 巣ごもり需要だけじゃない品薄状態のワケ

 ブームが最も過熱した1982年には、これを買い求めようとする小学生がデパートに大挙して押しかけ、将棋倒しになり4名負傷という事件もあった。と、そこまでヒートアップしてはいないが、国内ではガンダムのプラモデル、いわゆるガンプラが当時を彷彿とさせるような品薄状態が続いていて、逆に海外で多く売れているという。特に昨年末のクリスマス商戦から入手困難な状況が続いているようで、ネットでは量販店に買いに行ったものの商品が置いてなかったので何を選ぶか悩まずに済んだ…といった報告が、がら空きの棚の写真と共に上がっていたりする。

 発売元であるバンダイスピリッツの親会社、バンダイナムコホールディングスが2月8日に公表した決算を見ても、そうした様子がよくわかる。21年4〜12月の売り上げ高が前年同期比で15.6%アップの約6280億円で、ガンプラを含むトイホビー事業では同27.3%アップの約2860億円と、全体の数字に大きく貢献している。もちろん一番の理由はコロナの巣ごもり需要。家で手軽に楽しめるホビーとしてプラモデル全体がその恩恵にあずかってきたが、これにガンプラの場合は海外でのブームが加わった。

「20年に40周年を迎えたガンプラは、同年5月に累計出荷数で7億個を突破するという快挙を果たしています。もちろん根強い人気によるものですが、実は現在の出荷数の半分は海外向けなんです。ガンプラが売られているガンダム関連の複合施設の『ガンダムベース』は海外に14店舗あって、韓国に10店舗、中国に2店舗あるほか、台湾に1店舗、そして昨年11月には東南アジア初のタイにも出店しています」(経済ジャーナリスト)

 今年に入ると、フランスで「ガンプラ専門店」が出来たとテレビで取り上げられて、ツイッターで話題になったこともあった。ただバンダイスピリッツによれば、海外向けの約8割はアジア地域だという。それ以上の地域別の売り上げは公表されていないが、「高達」と翻訳される中国ではかなり人気があるようだ。昨年4月には上海でららぽーとがオープンしたが、モニュメントとして実物大のガンダムが設置されて、ファンがガンプラを求めて殺到したと伝えられている。

 日本発の文化であるガンダムが海外でも人気なのは結構なことだが、前述したように国内では品薄状態が続いていて、その理由はただ単に国内向けの数が不足しているだけでもなさそうだ。

「転売ヤーの存在が指摘されています。ただ転売ヤーが出現するのもそこに希少性があるからで、数が少ない→転売ヤーが出現→さらに数が減る→店舗で見かけたら強迫観念で購入する…という、品薄で生じる買い占め状態になっているからだと考えられます」(同)

 バンダイスピリッツでは以前から海外展開を図り、03年にガンダムベースをソウルに海外初出店し、既に15年には3割が海外向けだった。同社では海外でプラモコンテストを開催するなど地道なプロモーションを行ってきた経緯があり、昨今の動画配信の広がりでアニメの視聴が容易になって、そこにコロナ禍での巣ごもり需要が加わってブームの火をさらに大きくしたといったところだろう。

(猫間滋)

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