西武HD、プリンスホテルなど一挙売却で「埼玉西武ライオンズはどうなる?」

 セブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武の売却を検討していると伝えられた矢先、今度は西武ホールディングスがプリンスホテルなど約30のホテルやレジャー施設の売却を検討しているということで、“西武売り”の動きが相次いでいる。

「06年にセブン&アイは当時のそごうと西武百貨店の持ち株会社を2000億円超で買収。大丸が松坂屋と、三越が伊勢丹と…と、百貨店各社で再編がある中、09年にセブン&アイ傘下の百貨店事業会社としてのそごう・西武になりました。ただ、そもそも時代的に百貨店は苦戦を強いられていたところに、ここに来てコロナ禍が直撃。セブン&アイの利益のほとんどは国内外のコンビニで成り立つという状況にありました。一方の西武HDは、鉄道とホテルなどのレジャー施設が大きな2本柱ですが、こちらもやはりコロナ禍が直撃。21年3月期は大手私鉄16社の中でもダントツに赤字額が多く、グループ全体で過去最大の800億円の赤字でした」(経済ジャーナリスト)

 セブン&アイは外資系の投資ファンドに突き上げられる形で、西武HDは財務の立て直しから、共に外資系投資ファンドへの売却を進める方向で動いている。売却額はそれぞれ2000億円、1500億円となる見込みだ。

 セブン&アイのそごう・西武売却はもともと購入したものを手放すだけの話だが、西武HDの場合は会社のスリム化だから事情はだいぶ異なる。「主軸」となる軽井沢や品川のホテルはそのまま残すが、ザ・プリンスパークタワー東京や札幌プリンスホテルなどは手放して運営のみに特化する。グループは約80社からなるが、西武建設も今回手放す。

 グループ内での切り売りとなれば気になるのが、埼玉西武ライオンズの今後だ。今回は売却の対象とはなっていないが、時と場合によっては外に売られてしまうのではないかと、冷や冷やしながらニュースを受け止めたファンもいるかもしれない。だが結論を言えば、それはなさそうだ。

「今年3月に800億円の最終赤字と公表された時も、後藤高志・球団オーナーは『影響はありません』と断言し、『しっかりサポートしていく』としていました。売却は『しない』ではなく『できない』と見る向きもあります。というのも、ホームスタジアムのメットライフドームは17年12月から約180億円を投じて改修して、21年3月に竣工したばかり。本格的な投資資金の回収はコロナ後なので、今手放してしまってはドブに捨てるようなもの。しかも、西武狭山線の終点というスタジアムのロケーションを考えれば、池袋から通じる鉄道のファンの利用はグループにとってかなりの身入りとなります。さらにライオンズまで売却となると、銀行のみならず世間一般の信用はガタ落ちになるでしょうから」(同)
 
 ライオンズ・ファンとしてはしばらくは安泰ということらしい。

(猫間滋)

ビジネス