世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「新庄監督のキャンプ視察は画期的」

 新庄監督のキャンプに向けての発言に感心させられた。日本ハムの沖縄キャンプは例年、1軍が名護、2軍が国頭で行われていた。ところが、新庄は「2軍ではない。A、Bと分けているだけと(選手に)伝えたい」と報道陣に説明し、2月1日のキャンプ初日は実際に国頭のB組の視察から行う予定だと明かした。どうすれば戦力の底上げにつながるか考えているし、慣習に縛られない行動力が素晴らしい。

 僕もオリックスの2軍監督時代には、キャンプ2軍スタートとなった選手のモチベーションを上げるのに苦労した経験がある。選手というのはキャンプの1、2軍の振り分けを周囲が思う以上に気にするもの。故障者や実績のある選手は別にして、1軍定着や、レギュラー獲りの勝負のシーズンとの思いもある選手は、キャンプ2軍スタートとなるとガックリしてしまう。だからキャンプインのミーティングでは、「頑張っている選手は必ず1軍に推薦するし、腐らずに前を向きなさい」と伝えていた。

 実際にキャンプ中の1、2軍の入れ替えはあるし、スタートの振り分けで開幕1軍の道が閉ざされたわけではない。それでも、自分の立ち位置がわかってしまうのも確か。だから、最近は選手を傷つけないように、1軍キャンプ、2軍キャンプという言葉を使わず、A組、B組という名称を使うチームが増えている。でも、選手からしたら気休め程度にしかならない。

 ところが、常識の通用しない新庄に「ただ単に練習する場所を分けているだけ」と言われれば、そう信じたくなる。広い敷地で1、2軍の合同キャンプを張っている球団もあるが、名護と国頭は約30キロも離れている。就任1年目の監督が1軍キャンプ初日に不在なのは普通なら考えられないこと。B組の選手は「俺たちも監督から期待されているんや」と張り切る。A組の選手たちも、うかうかしていられないと刺激になる。1、2軍全員が目の色を変えてのアピール合戦となるから、チーム内競争は間違いなく活発になると思う。

 新庄監督との出会いで、人生が変わる選手がきっと出てくる。プロ野球の世界は、監督が代われば、試合で使われる選手も違ってくる。守備的に行くのか、攻撃的に行くのかのチームづくりだけでなく、人間のやることやから好き嫌いもある。不遇だった選手が新監督のもとで日の目を見るのはよくあること。だから、監督1年目のチームはギラギラした雰囲気が漂うものやけど、新庄監督の日本ハムの場合はなおさら。去年までのレギュラーもドラフト下位のルーキーも横一線の扱い。どこにチャンスが転がっているかわからない。

 僕も西本監督と中田昌宏コーチとの出会いがあったからこそ、一人前のプロ選手になれた。西本さんに体の回転で打つ阪急型の打撃を教えてもらい、外野ノックの名手の中田さんには、キャンプ連日の特守で鍛えてもらった。下手くそやった僕が変われたのやから、強い体さえあれば、練習次第で誰でもうまくなれる。

 新庄は監督就任以来、テレビのバラエティー番組に引っ張りだこで、発信力はえげつない。選手も新庄バブルで全国区に名前を売るチャンス。守備、走塁に強いこだわりがあるから、どんな指導をするのか本当に楽しみ。失敗することもあるやろうけど、いろんなことにトライしてほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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