またも炎上「切れ長つり目」ディオール、ベンツに続き中国企業が差別批判の的に

 フランスの高級ファッションブランド「クリスチャン・ディオール」が、上海の美術展で公開したアジア系女性モデルの写真に「アジア人や中国人を侮辱している」との批判が殺到、写真の撤回騒動に発展したのは昨年11月のこと。さらに12月には、独メルセデス・ベンツがネット上の広告に起用した目が細い女性モデルに対し、「中国人を蔑視している」との批判が起こり、同社が動画撤回に追い込まれたことが報じられた。

 そんななか、今度は中国の菓子メーカーのネット広告に起用された中国人モデルの画像が「欧米のアジア人に対するステレオタイプなイメージに迎合している」としてネットで炎上、物議を醸していることがBBC Newsなどの報道により、明らかになった。

「この広告は『三只松鼠』という会社が2年前に制作したもので、中国人モデルの菜嬢嬢さんを起用。彼女の細く切れ長の瞳が目を引く印象的な広告でした。ところが、昨年11月に“ディオール問題”が勃発したことにより、一部のSNSユーザーから『中国人をあえて醜く表現している』といった批判が殺到。結果、三只松鼠は『故意に醜く表現したわけではないが、大衆的な美意識にそぐわなかった。消費者を不快にさせて申し訳なかった』と謝罪、広告をネット上から削除しました」(中国事情に詳しいライター)

 ところが誹謗中傷は、会社だけにとどまらず、モデルを務めた菜さんに対してもぶつけられ、彼女は中国のソーシャルメディア「微博」に、「私の容姿は両親から与えられたもの。生まれたその日に私が自分の外見で中国を侮辱したとでもいうの?」と複雑な心境を吐露した。

「中国には古来、伝統的に細い目の女性が好まれる文化がありました。唐王朝の絵画では、女性の目は細く長く描かれています。一方で、欧米では目尻を指で引っ張って『つり目』の仕草をするような、アジア人に対する差別が横行していました。ここには確かに根深いアジア人差別があるのは事実ですが、中国が自国モデルの生まれつきの細目にも過敏に反応する背景には、急速な近代化があると思われます。いまの中国女性たちは流行最先端のメイクを好み、目を大きくしたり瞼を二重にする美容整形を行う人も急増しています。そんな現状と、西側の企業がもつ中国人のイメージとの乖離が、一部の人には耐えられないのでしょう。今、中国のインターネット上では、ナショナリズムや反西洋の機運が高まっていますから、今後も同様のケースが起こる可能性はありますね」(同)

 渦中のモデル・菜さんは微博への投稿で、「目が小さい。それだけのことで、私は中国人としての資格がないのか?」として、どんな容姿の人にも「誰もがもっと優しくなってほしい」と吐露している。中国で「切れ長のひと重瞼」の広告が受け容れられるのは日はくるか。

(灯倫太郎)

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