中国「核戦争に勝者なし」声明の裏でインド国境に“ロボット兵器”配備のワケ

 核兵器を保有するアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5カ国が3日、「核戦争に勝者はいない」として、核戦争や軍拡競争を防ぐための共同声明を発表。アメリカ国務省の報道担当者は「各国は緊張状態にあっても、核兵器については自制する責任があることを明確にしている」と語り、中国外務省も会見で「5カ国が初めて出した歴史的な声明で、このとりまとめに中国は積極的な役割を果たした」とその意義を強調。全世界に平和的解決をアピールした。

 ところが、そんな声明とは裏腹に、中国と同じく核保有国であるインドとの間では、昨年来一触即発の状態が続いている。

「そもそも、インドが核兵器を持った理由は1962年の中印国境紛争によるもので、この紛争でインドは中国に敗れ、その中国が64年に核実験を行ったことから核武装に至ったという経緯がある。ただ、中国とインドとの国境付近では過去40年の間に何度かいざこざはあったものの、1975年以降、死者が出ることはなかった。ところが、2020年6月に起こった両軍の衝突で、インド側に20人の死亡者が出たことで一気に緊迫。インド軍は有事に備えてAIやロボット、ドローンなどの軍事兵器を準備。中国軍も負けじと国境付近にロボット戦車を配備するなど、対抗措置に出たことで、さらに緊張状態が高まっています」(軍事ジャーナリスト)

 インドのメディア「WION」(昨年12月31日付)によれば、中国がインドとの国境に配置したロボットは「SHARP CLAWS」と呼ばれるマシンガン搭載の無人戦車で、現在はリモートでコントロールしているが、近い将来、自律化する可能性もあることから、同メディアは「中国からの新たな脅威」と報じている。

「現時点では、人間の判断を介さずに標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的だとして、自律型殺傷兵器、いわゆるキラーロボットの開発と使用に対し国際NGOや世界30カ国が反対しています。ただ、技術発展の流れからして、AIやロボット、ドローンの軍事活用はさらに進むはずで、その意味でも、今回の中国による『SHARP CLAWS』配備は、インド軍を最大限刺激する材料になったことは間違いない」(同)

 一方、ロシアは昨年、ベラルーシとの合同軍事演習で、AIを搭載した無人式の戦車型兵器「ウラン9」を公開している。これは遠隔操作により戦闘地帯を走行し、2キロ先の目標物を識別、砲撃やミサイル発射を行うという、文字通りの「殺人ロボット」だ。

「先の声明で、米ロは核使用に関しては反対の立場をとっているものの、自律型殺傷兵器の開発や使用には反対していない。また、中国もインドも軍事へのAI導入に積極的ですからね。両国は世界1、2位の人口を擁し、いずれも核を所有するアジアの二強。万が一軍事衝突が起きた場合、『核兵器』は使用されなくとも、『殺人ロボット』が使われる可能性はあるということです」(同)

 取り返しがつなかい事態になる前に、サイバー兵器の開発や使用制限について国際機関でルールを定めることが急務だ。

(灯倫太郎)

ライフ