宮城県が全国に先駆けた水道事業を民営化するという。話としては既に7月の県議会で決まっていたが、11月6日に民間の10社からなるグループ企業と話が固まって実際に契約を締結、来年4月から運営は事業者に任されることになる。
今回の民営化は小難しいことを言えば「コンセッション方式」と呼ばれるもので、宮城県が施設の「所有権」は保持したまま「運営権」だけを民間に売却するというもので、20年間の期限付きだ。だからある程度は試験的な意味も含むものだが、
「10社のグループ企業の中にはフランスの外資系企業も含まれていることから、命のインフラともいえる水を他人任せにするのは『経済安全保障』的にどうか、という反対意見もありましたが、最終的には経済合理性が優先された形になります」(経済ジャーナリスト)
いずれにせよ今回の契約締結で、仙台市を筆頭とする25市町村、県民の8割に当たる190万人が利用する水道は民間企業の運営に任されることになる。
今回、民営化された理由は想像に難くなく、ひっ迫する地方財政とその中でのサービスの維持のためだ。全国的に人口が減る中、仙台を有する宮城県もその例に漏れるはずはなく、財政はひっ迫する。一方でユニバーサルサービスとしての水道は固定費がかさむばかり。ならば民間に任せるしかない。県の試算では、今後40年間で1.5〜1.7倍に料金が膨らむとされ、かたや民営化すれば県の事業費は337億円が抑制されるという。
今後の水道をどうするかはもちろん宮城県に限った話ではなく、ある監査法人が今年に試算したところによれば、18年の水道料金を基準にした場合、43年の25年後には43%の値上げが必要になり、特に31の自治体では料金が1万円を超えるという。確かに水道料金だけで毎月1万円以上取られたら堪らない。世帯によっては携帯電話以上の維持費になる。だが、単純に民営化すれば良い話ともいえない。命のインフラを手放すことはやはり違和感が伴うというもの。
「水道の民営化は避けられない課題として議論されてきましたが、特にイギリスやパリといった西洋先進国での失敗事例があったので反対論は根強くありました。双方とも水の質が低下し料金が高騰するという、当たり前の心配が現前して、完全に民営化に失敗した過去があります。イギリスでは投資ファンドの草刈り場になって、貧困層は水道料金が気になるからと、トイレの水を毎回流さないといった家も生まれました」(前出・ジャーナリスト)
今では水もタダではない時代になっているのは理解できる。ただ、あまりにケチらなければならないのは肩身が狭すぎるというものだろう。
(猫間滋)