「いぶりがっこを守れ!」全国から秋田の伝統漬物に巨大エールのワケ

 これも、多くの日本人が日本の「伝統食」を愛する証に他ならない!

 時事通信社が配信する「JIJI.COM」が6日、「いぶりがっこ、伝統の味ピンチ 衛生基準導入、高齢農家『何年できるか』」とのタイトルで、秋田県の郷土漬物「いぶりがっこ」が、改正食品衛生法の施行により、製造のピンチに直面していると伝えた。

 記事によれば、6月施行の改正法により漬物製造業も営業許可の取得が必要になり、国際標準に沿った衛生管理が義務付けられたため、「いぶりがっこ」生産者へも専用の製造場所を設けるよう規定された。しかし、「いぶりがっこ」を作るのは、多くが小規模の高齢農家。そのため改築費が捻出できず、生産者が苦境に立たされているというのである。

 この記事が配信されるや、SNS上には《浅漬けと違って、燻してから塩などに漬けてるものだから、保存や衛生面を漬物で一緒くたにするのも違うだろ》《昔から脈々と受け継がれ製造している田舎のおばぁちゃん達はその辺りに関しては半端な料理人より熟知している。とにかく無くしちゃいけない伝統だ》《まずは、どんな菌がどういう条件で繁殖しているかを調べるべき。いぶりがっこのリスク評価をしてあげれば良い》など、いぶりがっこ擁護論が続出。さらには、《なんで、潰す方向でしか検討ができないんだろう?潰さない方向で検討してみようよ》《クーポン券に何百億も使えるならこういう地方の伝統や食文化にだって予算立ててしっかり守ってほしい》というコメントもあり、7日時点で3000件を超える心温まるコメントが殺到、思わぬ「いぶりがっこ愛」に食品関係者も驚いているという。

 いぶりがっこは、干大根を燻して作る秋田名産の漬物で、「がっこ」とは秋田の方言で漬物のことだが、

「積雪が多い秋田では冬の時期、大根を天日干し出来ないことから、昔から家の中に吊るして干す習わしがあり、囲炉裏がある家が多かったことから、囲炉裏の煙で大根が燻されてできたのが『いぶりがっこ』の始まりなのだとか。現在は、『いぶし小屋』と呼ばれる専用の小屋を用意し、小屋の天井から大根を吊るして、その下で丸太を燃やし煙で5日程度大根を燻す、というのが一般的な製法。大根からしっかりと水分が抜けたら、それを米ぬかやザラメ、塩などに2~3カ月ほど漬け込んで寝かせたら出来上がり。ただ、使う木の種類や漬け込み用の材料で風味が変わるため、作り手によってその違いを楽しめるのも魅力です」(食品関係者)

 ところが、近年の浅漬けをはじめとする食中毒騒動を受け、漬物製造も改正食品衛生法の対象になり、今年6月から食品を扱う全事業者に対して「HACCP」による衛生管理の完全義務化がスタート。

「HACCPとは、食品の製造工程を細分化し工程ごとのリスク管理を行うことで、問題がある商品の出荷を防ぐというもので、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が運営する食品規格委員会が発表している国際的に認められた手法です。ただ、日本には先人の知恵により、その地域ゆえに編み出された安全な伝統食物も少なくありません。裏を返せば安全だからこそ、脈々と受け継がれてきたわけですからね。それを、問題になった浅漬けと一緒くたにすることは甚だ疑問ですね」(同)

 2013年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」。そういう意味では、いぶりがっこも日本人の伝統食であることは間違いない。報道を受け、官公庁や自治体には日本の伝統食を守るために、多くの声が寄せられているというが、秋田伝統の味の存続に注目が集まっている。

(灯倫太郎)

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