本州と九州の上場JR各社(東、東海、西、九州)の21年9月中間連結決算、つまりは21年4月1日〜9月30日の上半期の業績が11月2日に出揃ったが、各社共に軒並み赤字で、JR東が1452億円、西686億円、東海444億円、九州20億円で、合わせると約2600億円の赤字だった。
それはそうだ。コロナ禍で人々は外出を自粛、
「JR東がSuicaのデータから山手線の利用状況を調べて11月に発表したところによると、20年1月から21年9月の間、20年1月を100%とすれば、月の通勤客は50〜70%減少しているとのことでした。特に品川駅の50%強のようにオフィス駅の減少幅が大きく、東京駅、新橋駅も同様に大きく減少した模様です」(経済ジャーナリスト)
もちろんコロナ禍での落ち込みは、誰もが予想していなかったところ。一方、それ以前に人口減少や勤務形態の多様化、東京一極集中の回避などから将来的な移動ニーズが減ることは、JR東において予想がついていたこと。
それによると2030年には20年に比べて人の輸送量はキロ数で4%以上減少し、40年になると9%以上も減少するという。大きな固定費の維持が必要な鉄道にしてみれば、10%以上も客足が減少するのは死活問題だ。だから同社では18年7月に「変革2027」というグループ経営ビジョンを掲げていた。今のうちに大きな変革をして、利用者の減る未来に備えていこうというものだ。
そしてその様々な新たな取り組みが、ここに来て続々と実現しつつある。
ちょうどそんな分岐点の今年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅を、同社は「やってみようの駅」として位置づけた。文字通りとにかく新しい取り組みをやる駅ということだ。だからゲートウェイ駅にはAIの案内・清掃・警備のロボットが働き、無人決済のコンビニが投入されている。いずれも各所で実証実験が行われている新しい技術だ。また2月からは駅構内に処方箋無しで販売できる医療用医薬品を販売する薬局を導入。実証実験を経た後、駅を「暮らしのプラットフォーム」として店舗数を拡大している。
「11月18日には自社のECサイトのリアル店舗として、東京駅にショーケース型の自販機を設置しました。Suicaのペンギングッズなどが販売されていますが、12月以降は山手線を中心に20駅に拡大予定で、一部店舗ではオペレーターによるオンライン接客を導入するなど、駅のプラットフォーム化をより進める計画があります。駅弁や地方の特産品など、旅行や地方に沿ったニーズが結びつくのが鉄道の強みですから、将来的にはそういったものも導入されるでしょう」(前出・ジャーナリスト)
こういった姿を見れば、鉄道は単に人を運ぶものといった既成概念を取り壊し、鉄道以外でも稼いで行くという方向に舵を切ったことが見て取れる。駅でたいがいの買い物が済むようになれば、コンビニやスーパー、ドラッグストアにとってかなりの脅威だ。いや、駅がそうなろうとしているのだ。
(猫間滋)