見つかれば懲役15年でも、「イカゲーム」が北朝鮮の人々を魅了する理由とは?

 Netflixで配信され、大ヒットした韓国のドラマ『イカゲーム』。ファン・ドンヒョクが脚本・監督を務め、イ・ジョンジェ、イ・ビョンホンらが出演。物語は456億ウォン(約44億円)の賞金がかかった謎のサバイバルに参加した人々が最後まで勝ち抜くために命をかけてゲームに挑む…というものだが、そんな世界的人気作がいま、北朝鮮の平壌などで富裕層や若者を中心に大ブームになっているという。

 北朝鮮事情に詳しいジャーナリストが語る。

「このニュースを報じたのは米政府系メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)で、現地消息筋の談話を紹介。平壌では『イカゲームが入ったUSBやSDカードのようなメモリー媒体が海上密貿易を通じて内陸まで入ってきている』『主に富裕層や若者が視聴しているが、視聴者は取り締まりを避けるため、夜ふとんの中でこっそりと見ている』と伝えています」

 北朝鮮では韓国の映像物をはじめ、他国文化の流入統制を強化するため、昨年「反動思想・文化排撃法」なる法律を制定。映像物を流布した場合は死刑、視聴した者に対しても最長15年の労働教化刑が科されることが決まっている。RFAの報道が事実なら、彼らは身の危険を冒してまで「イカゲーム」に没頭していることになるのだが…。

「同ドラマは、負債を抱えた人たちが大金を獲得するためにゲームに挑戦し、失敗した人々は運営側から殺害され、文字通りゲームから排除されるというもの。実はこれが、外貨稼ぎに血道をあげる北朝鮮幹部や富裕層の生活に似ているというのです。特に、大金を稼ごうと命をかけてゲームに参加し、死んでいく人たちの姿が、彼らの共感を呼んでいるのでは?とも言われています」(同)

 ドラマには、賞金を弟のために使い、母親を国外に逃がすために死のゲームに参加する脱北女性、カン・セビョク(プレイヤー067)も登場する。

 なお、朝鮮メディアは『イカゲーム』の世界的人気について「弱肉強食と不正腐敗が大手を振って、非人間的行為が日常化した南朝鮮社会の実像を暴露している」「極端な生存競争と弱肉強食が蔓延した南朝鮮と資本主義社会の現実を描いているからだろう」と皮肉を込めて分析しているが、見つかれば「懲役15年」でも見たい市民が続出しているところに、北朝鮮が抱える闇があることは間違いないだろう。

(灯倫太郎)

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