店舗数は60店舗台に過ぎないが、兵庫・大阪・奈良で食品スーパーを展開する1959年創業の老舗の「関西スーパーマーケット」をどちらが傘下に収めるか。関西スーパーとの経営統合で240店舗超となって関西のスーパーで覇権を握りたい阪急阪神東宝グループの「エイチ・ツー・オー リテイリング」(H2O)と、関東で格安スーパーを展開しているが関西スーパーの大株主として関西進出も果たしたい「オーケー」との間で行われていた「関西スーパー争奪合戦」。
H2Oとの友好的統合の道を探っていた関西スーパーが10月29日に開催した臨時株主総会で、「統合賛成派」が多数を占めて一旦はH2Oが勝利したはずだったが、票の集計を巡ってケチが付き始め、ドナルド・トランプがジョー・バイデンに敗れたアメリカ大統領選挙よろしく、「インチキ」と疑義の声が上がっている。
「統合を進めるには3分の2以上の株主の賛成を得る必要があり、結果、賛成派が反対派を上回ったのですが、その得票率は66.8%と薄氷を踏むものでした。ところが総会の検査役から本来は白票は棄権とすべきところを賛成票としてカウントしていたことが発覚。当然のことながらオーケー側から疑惑を解明すべきとの声が上がっているのです」(経済ジャーナリスト)
なぜこんなことが生じたかと言えば、事前に賛成票を送付していた株主が当日は白票を投じたから。もともとH2Oとの統合案は統合ありきで進んでいて、統合に株式交換買付(TOB)で待ったをかけようとしていたオーケー側が提出した株価は最大限に会社の価値を考慮したものだった。
となれば株主にとってはオイシイ話で、しかもH2O傘下で経営があまり芳しくないイズミヤや阪急オアシスなどと同じ所帯に収まるのはどうかという見方があった。だから、当初は賛成だった株主が当日になって判断が付かずに、イコール棄権となる白票を投じたとしてもおかしくはない。そこでオーケー側は「疑惑の解明」を主張しているのだが、対する関西スーパーは「適法」として譲らない。結局、ズルズルと争奪戦が長引く結果となっているのだ。
となれば、上に判断を求めるしかなく、オーケーは裁判所に統合差し止めの仮処分を申請。これが認められれば統合はいったん白紙に戻ってまたバトルだけが再燃する。生き馬の目を抜く資本主義の世界に大岡裁きなどは通用しない。
(猫間滋)