日本中が「ドーハの悲劇」に涙したのは93年10月28日だった。それから28年、テレビ地上波に見切りをつけられ、我々は敗退の瞬間を見ることすらできないかもしれない。サッカーW杯最終予選で崖っぷちに追い込まれた森保JAPAN。カタールへの道に立ちはだかる「5つの壁」を緊急検証する!
「俺ら生き残ったぞ! 絶対に行くぞワールドカップ!」
10月12日に行われたサッカー・カタールW杯アジア最終予選のオーストラリアとの試合後、ピッチで選手とスタッフが円陣を組み、絶叫したのは、日本代表の森保一監督(53)その人だった。
それほどまでに追い込まれていたのだ。1勝2敗とスタートダッシュに失敗すると、「森保解任」がツイッターのトレンドに急浮上、サポーターの不満は頂点に達していた。4戦目のオーストラリアに敗れれば監督更迭必至で万事休す、という事態に陥っていた。
背水の陣で迎えた大一番、森保監督はフォーメーションを4‐2‐3‐1から4‐3‐3に変更し、3戦目で失点につながるミスで戦犯扱いされたMF柴崎岳(29)をベンチに下げて、MF田中碧(23)をスタメンに起用。この秘策がハマって、終了間際に勝ち越し、2‐1で勝利を収めたのだ。現役時代に名ドリブラーとして活躍、元日本代表でサッカー解説者の金田喜稔氏は、首の皮一枚でつながった試合をこう振り返る。
「森保監督が覚悟を決めて送り出したMF遠藤航(28)、MF守田英正(26)、田中の三角形のバランスが非常によく、それぞれの持ち味を発揮した。サイドもDF長友佑都(35)とFW伊藤純也(28)が制圧し、オーストラリアを苦しめました。2敗している崖っぷちで選手に『顔を上げろ、前を向け』と言っても、心情的には切り替えるのが難しい。そんな中、一番の特効薬は目の前の勝ち点3を取ること。アウェーの地から移動し、中3日で一体感を持って戦えたのは本当に大きかった」
2位のオーストラリアに勝ち点差3で食らいつくことはできたが、安心できる状況にはほど遠い。7回目のW杯出場を目指す上で、「5つの壁」が立ちはだかろうとしている。
【1】「謎」采配
オーストラリアに勝利したとはいえ、終盤の采配に「疑問が残る」と金田氏は言い、こう続ける。
「同点のままで終われない日本は、点を取りにいかなければならない場面で、なぜ守田に代えて柴崎を投入したのか。理にかなった交代で言えば、ボランチ3枚を残すより、FWオナイウ阿道(25)を入れて攻撃に厚みを作って攻めたほうが良かった。サウジ戦のミスであれだけブーイングされた柴崎をピッチに入れて、自信を持ってもらう思いやりのある采配だったのかもしれませんが、これは勝たなければならない試合。森保監督のことは尊重していますが、結果論ですべてオッケーとはならないのです」
これまでの3戦でも、選手起用や交代のタイミングなどで疑問符がついた森保采配。元「サッカーダイジェスト」編集長の六川亨氏が指摘する。
「試合前からスタメンは誰もが予想できてしまうメンバー。交代選手も同じポジションで似たようなタイプを起用し、対戦国に徹底的に研究されていました。オーストラリア戦でようやく田中が出ましたが、基本的にベテラン中心で組む手堅い采配なので、過去の最終予選と違って若手のシンデレラボーイが登場しにくい状況にあります。代表に呼んでも使わなければ、チームは活性化していかない」
オーストラリア戦の采配がまぐれだった、とならなければいいのだが‥‥。
*「週刊アサヒ芸能」10月28日号より。(2)につづく