日に日に減少する新型コロナウイルスの新規感染者。巷では「急に減りすぎて不気味」「出かけられるから嬉しい」「まだちょっと怖い」など、意見も様々。それでも、これまで我慢に我慢を重ねてきたイベント興行はまさに再始動という感じで、映画も新作が続々と公開され、スポーツイベントも観客上限を緩和するなど動きが活発化。ファンはこのままコロナを抑え込んでほしいという思いを強くしている。
そんな中、スポーツイベントの観客数上限緩和を飛び越えて、”実験的開催”を試みているのが、18日に北九州市で開幕した「世界体操競技選手権2021」。この大会ではコロナワクチン接種証明書または陰性証明書を提示することで、会場をフルハウス(満員)にすることも可能。「コロナ禍の手本にしたい」という関係者の意気込みが伝わる大会となっている。注目された18日初日の観客数は1816人。満杯とはいかなかったが、最近では当たり前になっていた1席おきではなく、観客同士が隣り合って観戦する光景が見られたことに感動の声も上がったようだ。
この観客上限なしの大会は当然、各スポーツ関係者に注視されており、特にプロ野球界からは「何としても成功させてほしい」という声が多いという。その理由とは――。
「サッカー、ラグビー、バスケ、バレーなど、多くの競技が会場をフル観客で開催したい。そんな中、なぜ野球界から熱い視線が注がれているかというと、コロナ以降の人気低迷をファンも関係者も痛感しているからです。それが顕著に出たのがドラフト会議。2年続けて高校野球の甲子園大会が通常開催ではなかったことが影響し、世間が注目するスター候補が誕生しなかった。特に今年のドラフト会議は1位指名すら名前を知らないという野球ファンが多数というありさまで、これは明らかに夏の甲子園の無観客開催が影響していると考えていいでしょう」(スポーツライター)
毎年10月、平日の夕方に行われるドラフト会議はプロ野球の試合よりも視聴率が高いことでも有名だ。清宮幸太郎(現・日ハム)が7球団から1位指名を受けた2017年は平均視聴率が13.4%、根尾昂(現・中日)、吉田輝星(現・日ハム)らが注目を集めた翌2018年は14.2%、関西では瞬間的に20%を超えていた。ところが昨年の2020年は10.0%、そして今年はついに二桁を割って9.2%とじり貧というから、コロナ禍の無観客甲子園が理由というのもうなずける。
「ドラフト会議でもっとも平均視聴率が高かったのが2010年、ハンカチ王子こと斎藤佑樹が時の人となった年で14.4%。やっぱり満員の甲子園で躍動したスター球児がいた年は、ドラフトもそうですが、翌年のプロ野球まで盛り上がります。ワクチン接種証明による観客上限撤廃が野球界でもできるようなら、またあの熱気が戻ってくる。そう信じている関係者はとても多いですね(前出・スポーツライター)
視聴率はもちろん、悲しいかな今年のドラフト会議で指名された選手たちが人々の話題に上ることは現時点でほとんどない。サッカーも日本代表がオーストラリア代表に競り勝てたのは、一部で批判された観客たちの声出し応援のおかげという声も。そういう意味でも、世界体操2021の実験開催の成否は、今後のスポーツ界の在り方を左右しそうだ。
(飯野さつき)