米CIAが「中国専門部署」を創設、諜報戦はスパイ小説さながらだった

 何かにつけて熾烈な米中対立が繰り返される今、アメリカ中央情報局(CIA)は10月7日、対中国の諜報戦を念頭に置いて「中国ミッションセンター」と「トランスナショナル・テクノロジー」の2つのミッションセンターを新設することを明らかにした。今度はスパイ合戦でも米中が激しい火花を散らすことになりそうだ。

「トランスナショナルはその名に『テクノロジー』とあるように、AIや宇宙、半導体など、今後の世界中で先を急いで研究・開発される先端技術に関する分野の情報収集を行うのことになるので、自然とこの分野でも覇権を巡ってアメリカと競う中国に関する情報収集が中心となってくることから、中国ミッションセンターとその使命は重なることになるでしょう」(公安情報に詳しい週刊誌記者)

 今回の組織改編は、アメリカの政権交代に伴ったものでもある。というのも、トランプ政権時代に「コリア」と「イラン」の2つのミッションセンターが創設されたが、今回はこの2つのミッションセンターが廃止され、「アジア太平洋」と「中東地域」を担当する組織に統合される予定だからだ。理由の1つは、朝鮮半島やイランの情勢は周辺地域の情勢と無関係ではないこと。そして、それに比して中国の重要性が増し、比重が増えたという地政学上の変化があることだ。いずれにしても「コリア」と「イラン」はお役御免になるわけで、政権交代と同時に支配政党が変わったことで、前政権の外交戦略の否定の意味もそこには含まれる。

 ただ中国の台頭は今に始まった話ではなく、アメリカもこれまで手をこまねいていたわけではない。というよりも、トランプがファーウェイなどの中国系企業をアメリカから締め出したように、中国のスパイが先端技術を盗み出すのを常々苦々しく思っていたことは事あるごとに伝えられている通りだ。だがそれを許してしまっていた。なぜなら、アメリカは既に中国とのスパイ合戦で“敗北”を喫していたからだ。

「中国は以前からアメリカの先端技術を狙ったスパイ活動を展開していましたが、これが2010年代に活発化。アメリカはかなり苦戦を強いられたといいます。17年にニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところによれば、10年以降に中国で活動していたCIAの情報提供者12人が殺害され、拘束された人数も合わせればその数は18〜20人にも及んで、中国におけるアメリカのスパイ網は壊滅的なダメージを食らったとされています」(前出・記者)

 中には政府庁舎の中庭で射殺された人物もいたとも伝えられ、いずれにせよ10人以上が殺害されたというのだから、『ゴルゴ13』やアメリカのドラマの『24‐TWENTY FOUR-』さながらの諜報合戦が現場では繰り広げられていたというわけで、これが事実なら平坦な日常との差に驚くしかない。

 アメリカでもあまりに次々と要員が行方不明になることから11年に調査を始め、実は要員が2重スパイだったのではないかという疑いが生じていた。冷戦時代にはソ連相手に諜報戦を繰り広げ、2重スパイがいたことが表面化したことがあったが、今度は対中国で同じことが繰り返され、この2〜3年で複数のCIA、国防情報局の元職員が摘発・懲罰を言い渡されている。

「それも結局は爆買いにあっているからなんです。中にはアメリカの軍事情報が80万ドル(約9000万円)で中国側に売り渡されていたり、中国国内に潜らせている工作員の名簿が100万ドル(同1億1000万円)で買われていたなどというケースもあるとも報じられました」(前出・記者)

 といった経緯を踏まえれば、アメリカは捲土重来を期するということになる。さて今回の組織の再編・統合で反撃なるか。

(猫間滋)

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