使用率0%でも補助金は入る〝幽霊病床〟の闇実態に「給付金詐欺と同じ」批判噴出

 厚労省と東京都が都内の全ての医療機関に、新型コロナウイルス患者用の病床を増やすことを要請したのは、先月23日のこと。ところが、都に「すぐに受け入れ可能な即応病床」として登録しながら病床使用率が低い、それどころか、まったく患者を受け入れていない「幽霊病床」を持つ施設の存在が6日、日本テレビの報道で明らかになった。

「日テレが入手したのは『即応病床』と申請のあった東京都内172の病院の病床使用率をまとめたリスト。それによれば、病床使用率が100%を超えている医療機関は50施設、27施設が40%未満。驚くことに7施設は使用率が0%であることがわかりました。コロナ患者の治療は医療従事者の確保も含め、施設側の負担も大きい。そのため、重症用ベッド1床につき最大1950万円、さらに緊急時に備え、ベッドが空床でも確保料として1床につき1日7万1000円の補助金が国から支払われています。ですから、補助金を申請した施設は積極的にコロナ患者を受け入れなくてはならないはず。にも拘らず、補助金だけもらって患者を受け入れていない施設が半数もあったとは、空いた口が塞がりません」(全国紙社会部記者)

 さらに、11日配信のAERAdot.も、厚労省関係者から入手した資料として、「都内の37病院にはコロナ患者用病床が614床あるが、そのうち入院患者数はわずか268人で、病床使用率は44%にとどまった(数字は9月6日時点)」と指摘。つまり、残り56%が「幽霊病床」であるとして、コロナ病床の闇に包まれた実態を報じたのである。

「これまでにも、病院の『不正受給』に関するニュースは度々報じられてきましたが、その多くが、大学医学部の研修医などの名義を借り『幽霊医師』や『幽霊看護師』を水増しして不正に報酬を受け取るというパターンでした。しかし、度々事件化したことで再発防止策がとられ、近年は大幅に減少。今回、明らかになった『幽霊病床』もこれらと同根で、やっていることは持続化給付金の不正請求と何ら変わりませんからね。国としても実名を公表するなど、厳しい措置をとるべきですね」(前出・記者)

 報道を受け、SNS上では《患者を受け入れないで金だけ貰っているわけだ。悪質だな》《補助金の出どころは税金だからね。そこをよく考えてください、配る方も受けとる方も》さらに、《これって持続化給付金詐欺と同じですよね。警察による厳格な取り締まりをお願いします》といった厳しいコメントも散見された。

 前出・記者が続ける。

「もちろん、『すぐに受け入れ可能な即応病床』として登録し、補助金だけ受け取りながら患者を受け入れていなかった施設は言語道断ですが、そんな施設に付け入る機会を与えてしまった厚労省の制度設計にも問題があります。というのも、補助金というのは通常なら患者を受け入れた実績の上に発生するお金ですが、今回、厚労省はコロナ患者の受け入れ体制ができていないという世論の猛烈な批判を受け、急きょ病床を確保することになった。そのため、医者、看護師含め、ギリギリの人数で運営している民間病院では稼働できない病床ができてしまい、一方、一部の悪徳施設には安易に補助金が入るようなシステムができてしまった。そのあたりの抜本的な見直しが必要でしょうね」

 記者会見で「幽霊病床に対しては厳しく対応していく」と宣言した田村厚労相だが、言葉だけでなく迅速な実態解明と対応を願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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