実効性はあるのか?政府の「就職氷河期世代」支援にこれだけの疑問

 つい先ごろ安倍政権は、バブル崩壊後の90年代に就職時期を迎えた「就職氷河期世代」100万人の支援に乗り出すとの方針を打ち出した。この世代はおおよそ35〜45歳に当たり、文字通りバブル崩壊後の「就職氷河期」に就職時期を迎えたので社会の入り口段階で躓き、なかなか正社員になることが出来ないまま年齢を重ね、中には挫折感から引きこもりになる人も多数いることで、親の年金に頼るパラサイト・シングルなどとも呼ばれる。そのため、政府が設立する会議には、引きこもり経験者も参加する予定だ。既に内閣官房では特設ホームページを設け、情報発信のためのツイッターアカウントも取得してツイートが行われている。

「だが、本当にうまくいくのか?といった声が関係者の中からも上がっています」

 と言うのは、非正規労働の現場取材の経験がある社会部記者。
 
「政府がこういった方針を打ち出したのと時を同じくして宝塚市がこの世代に限った中途採用を行ったのですが、4人の内定に対して応募者は1600人もいて極めて狭き門でした。一方、厚労省が特例としてこの世代限定の求人をハローワークに認めたところ、1カ月で377件の求人が寄せられたと、あたかも行政は需要があるかのように公表しますが、業種別で多かったのが運輸、卸売・小売業、製造業で、どこも人手不足に喘いでいる業界ばかり。そんな募集は求人情報誌をめくればゴマンと溢れていますよ」

 結局、安定した公務員人気は高いが人気がない仕事は人気がない、という当たり前の結果をなぞっただけの現実がそこには横たわる。

 政府では令和2年度予算の概算要求で1344億円を支援プログラムとして盛り込んでいる。様々なプログラムがある中、最大の特徴は成功報酬型の民間委託だという。半年の実習で国が最大20万円の助成を行って職業訓練を受ける。8カ月以内に正社員となって、半年勤務したらさらに最大40万円が支給されるというが、

「またいつものパターンかといった感じですね。雇用のセーフティーネット作りや行き場のない老人、障害者支援など、国が補助金で民間事業を支援するとそこには必ず補助金目当てのズサンな施設が作られるのはもはや慣例みたいなものです。こういった制度設計だと支援事業に民間の参入者を増やすという理由で参入障壁が甘く設定されるので、悪質な業者が続々と手を挙げては、施設の定員のノルマをクリアするために『見なし定員』が押し込まれて、現場の管理はまったく行われないという補助金詐欺まがいのものが多数発生して新聞紙面を賑わせてきましたからね」(同前)

 しかも、支援プログラムの財源は雇用保険から拠出されるというから、働く人の給与の源泉徴収で賄われて国庫は痛まない。支援を打ち出すこと自体は褒められるべきだが、人手に困ったから外国人を受け入れようというのと同様、どうも安易な発想に受け取れるのだが。

(猫間滋)

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