「わが国にはコロナ感染は広がっていない」と言い続けてきた見栄か、はたまた中国製ワクチンを信用していない証なのか——。
北朝鮮が、新型コロナウイルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する、国際的な枠組みである「COVAX(コバックス)」から割り当てられた中国製「シノバック・バイオテック」のワクチン297万回分の権利を放棄したことが1日、国連児童基金(ユニセフ)によって明らかになった。国際ジャーナリストが語る。
「COVAXは世界保健機関(WHO)の主導で2020年に発足した枠組みで、アメリカや中国、日本を含む180以上の国や地域が参加。高・中所得国がワクチンに共同出資・購入して人口の2割分を受け取る一方、低所得の国には無償で提供するというもので、21年中に20億回分のワクチン確保をめざしているとされています」
実は北朝鮮によるCOVAXからのワクチン受け取り拒否は、初めてのことではなく、7月にも英アストラゼネカ製ワクチン約200万回分について、受け取りを拒否。
「これは、韓国の国家安保戦略研究所が明らかにした情報ですが、実は、COVAXだけでなく、ロシアも自国製ワクチン『スプートニク』の提供を北朝鮮に複数回申し出たことを、同国のセルゲイ・ラヴロフ外相が談話で明らかにしています。だた、北朝鮮はいずれの申し出も拒否したということです」(前出・ジャーナリスト)
韓国情報筋によれば、北朝鮮のワクチン受け取り拒否理由は、副反応への懸念に加え、ワクチンを分配・保管するための十分な冷蔵設備を持っていないからだとも言われている。だがそんな中、北朝鮮の製薬工場が独自のワクチン、治療薬の開発に成功したとの仰天情報が先月31日、北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」によって伝えられた。
記事によればワクチン開発に成功したとされるのは、咸鏡北道清津の羅南製薬工場で、内部情報筋の話として《「関連部門で成果を上げた」との報告が中央になされ、工場でワクチンと治療薬の研究にあたっていた40代の研究者と薬剤師2人が家族と共に首都・平壌に呼び出された》とし、その後《2人は、中央医学研究院の薬学研究所の室長に就任し、中央は彼らの事業を絶対的に保証せよとの指示も下した》のだという。
前出のジャーナリストが語る。
「ベールに包まれた国なので、事実関係については正直、わかりませんが、今の北朝鮮にワクチンを研究する技術や機関があるのかは甚だ疑問。ワクチンの受け取りを辞退したのは、国内にはいまだ新型コロナ感染者がいないとの姿勢を崩していないからでもあるでしょう。ただ、中国はメンツを潰された恰好になりますからね。今後、対中関係の火種になることも考えられます」
北朝鮮にもソッポを向かれたことで、中国ワクチンの不人気がさらに加速することは間違いない?
(灯倫太郎)