フジが「ネット同時配信」年度内開始で“テレビ離れ”が加速しそうなワケ

 フジテレビは、テレビ番組をインターネットでも同時に観られる「同時配信」を今年度中にはじめる方針であることを明らかにした。若者のテレビ離れが加速する中、ネット配信で新たな視聴者を獲得する狙いがあると見られている。

 9月6日に開かれた10月期の改編発表会で同局の編成部長が、「年度内に始めることを念頭に調整に入っている」と同時配信をおこなう意向であることを明らかにした。ただ、具体的な放送開始時期や全番組を配信するかなどは発表されていない。

 NHKは昨年度から同時配信サービス「NHKプラス」をスタートさせ登録数も約160万件と好調に推移し、東京五輪も多くの人が同サービスから視聴した。しかし、民放の同時配信は広告や地方局の問題もありなかなか進まない状態にあって、昨秋には民放キー5局が一斉に始めるとも報じられていたが、結局は立ち消えになっていた。ただし今回、フジが今年度中の配信を明言したことで、他の民放キー局も追随する可能性は高いと見られている。

「同時配信がテレビ離れを食い止める起爆剤になると期待されているようですが、正直厳しいのでは。NHK放送文化研究所が5月に発表した国民生活時間調査では、10代と20代の半数がほぼ“テレビを観ない”と回答しており、さらに8月に総務省が発表した情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書によると、10代~60代が平日にテレビを観る時間よりもネットを利用する時間が初めて上回っている。コロナ禍で在宅時間は増えているにもかかわらず視聴時間が減っているということは、そもそもリアルタイムでテレビを観るという選択肢自体がなくなっている証拠で、どのデバイスで観るかはあまり問題ではないのです。さらに、広告や地方局の問題もあるため、もし高視聴率番組はネットで配信しないといった同時配信になった場合、むしろ余計にテレビ離れを加速させてしまう危険性もあるのではないでしょうか」(ITジャーナリスト)

 いずれにせよ、中途半端な同時配信だけはやめてもらいたいものだ。

(小林洋三)

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