昭和30年代後半の全盛期には首都圏発着分だけでも1日60往復以上が運行されていた夜行列車。その後、新幹線開通などの鉄道の高速化や航空機の利用客増加に伴い衰退の一途を辿り、2015~2016年には『北斗星』と『トワイライトエクスプレス』『カシオペア』が相次いで運行終了。これにより定期運行の夜行列車は東京~出雲市・高松を結ぶ『サンライズ出雲・瀬戸』のみとなってしまった。
しかし、ここにきて廃れかけていた夜行列車が再び人気再燃の兆しを見せている。JR西日本は昨年9月から『WEST EXPRESS 銀河』の運行を開始。毎日運行されているわけではないがデザイン性に優れた個性的な複数の座席・個室が用意されており、切符の入手が困難なほどの人気ぶりだ。
「近年、『ななつ星in九州』や『四季島』といったクルーズトレインと呼ばれる超豪華列車が次々と登場していますが、料金は1人数十万円とあまりに高額です。それに対してWEST EXPRESS 銀河はちょっと奮発すれば出せる程度のお手頃な価格に設定されており、人気の大きな要因になっています」
そう説明するのは鉄道ライター。また、新潟県の第三セクター、えちごトキめき鉄道も運行は不定期ながら『夜行急行』を運行。国鉄時代に活躍した車両を使用し、昔懐かしい夜行列車の旅が楽しめるようになっている。
「同社の鳥塚亮社長は、廃止の危機に瀕していた千葉県のいすみ鉄道を再建した人物で、ユニークな観光列車を数多く企画したアイデアマン。この夜行急行は直江津発・直江津着と出発地も到着地も同じ駅で、移動が目的ではなく純粋に夜行列車を楽しむためのイベント列車にしているところはさすがです」(同)
ただでさえ鉄道会社はコロナ禍で業績が悪化。そんな中でも夜行列車は利用客が期待でき、今後増えていく可能性は高いという。
「観光列車は今の業界のトレンドになっており、そうした形での夜行列車なら大いにあるはずです」(同)
近い将来、夜行列車ブームが復活なんてことも大いにありそうだ。
(高島昌俊)