日本の原発処理水の海洋放出が、韓国の〝劇場型〟外交に使われる!?

 韓国の一部では、東京オリンピックをボイコットするべきという声も出てきている。

 事の発端は4月13日、日本政府が福島第1原発から排出されている処理水を福島県沖の太平洋に放出すると決定したことだった。同原発に貯蔵されている処理水は、約860兆ベクレルのトリチウムを含んでいるが、これを希釈し今後数十年かけて毎年最大22兆ベクレルを放出していく。トリチウム以外のコバルト60、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質に関しても100分の1以下に希釈可能だという。放出は2年後に始まる予定だ。

 この決定を受けて、4月14日に韓国与党の議員は「日本が決定を撤回しない場合、東京オリンピック出場をボイコットすべきだ」と主張。5月13日には、韓国南部、済州島の漁業関係者らが、日本政府と東京電力を相手取り海洋放出中止を求める訴訟を起こした。韓国政府としても日本政府と2国間協議を開催する予定だ。

 しかし、原発に詳しい専門家は、海外に目を転じても処理水の海洋放出は特に問題ないと解説する。

「処理水で最も問題視されている放射性物質はトリチウムですが、これは自然界にもありますし、どこの国の原発でも放出しているものです。たとえば、2018年にフランスのラ・アーグ再処理施設では1京1400兆ベクレル、19年にイギリスのセラフィールド再処理施設では423兆ベクレルを放出。韓国も18年に古里原発で50兆ベクレル、月城原発で25兆ベクレルを放出しています。月城原発は、2年前の時点で福島第一原発に貯蔵されていたトリチウムの累計6倍もの量を日本海に放出していました。また、古里原発に近い釜山港は韓国最大の海産物市場なため、韓国のロジックでいえば、日本以上に汚染された海産物を自分たちもたらふく食べているわけです」

 本来であれば韓国が日本を批判するのはお門違いというもの。それなのになぜ、彼らは日本批判を繰り広げるのか。日韓問題に詳しいジャーナリストはこう解説する。

「韓国の政治・外交戦略が〝劇場型〟であることが理由の一つです。韓国にとって〝科学的事実〟はそれほど問題ではなく、世界のオーディエンス(国際社会)に向けていかに自国の正当性を〝演出〟できるかに重きを置いています。これまでの日韓外交史を振り返っても、韓国は日本に対して劇場型外交を繰り返してきました。たとえば、一方的な慰安婦財団の解散、日韓基本条約に反した徴用工訴訟、レーダー照射問題などは明らかに韓国側の問題行動といえます。特にレーダー照射問題では、日本の哨戒機を敵機と見立て〝ロックオン〟しただけでなく、日本に責任転嫁するという宣戦布告ともとれる暴挙に出ました。これらのことに対して、日本が抗議するたびに韓国は、国際社会に向けて『日本は過ちを素直に認め、未来志向の関係を一緒に築いていくべきだ』などと上から目線で訴える始末。今回の処理水の問題でも、国際社会に対して『放射能を垂れ流す日本』というネガティブキャンペーンを展開し、韓国のプレゼンスを高めていく腹づもりなのでしょう」

 こうした韓国の「とりあえず大声で主張してみる」戦法が果たして功を奏しているのか否かはさておき、そもそも日本と韓国では外交に対する考え方も異なるようだ。

「韓国には『泣く子(駄々をこねる子)は餅を一つ多くもらえる』ということわざがあります。韓国はこうした国内の慣習を対日外交でも存分に使ってきました。なぜなら、日本に何を言ったところで大した抗議も来ないだろうと踏んでいたからでしょう。たとえば、ひと昔前の日本の政権は頻繁に『遺憾』という言葉を使っていましたが、韓国語の『遺憾(ユガム)』は日本語よりはるかに軽いニュアンスで使われる言葉。この程度の抗議では韓国には全く響きません。結局、日本政府は韓国が何か問題を起こしてきてもうやむやのままにし、忘れた頃に韓国はまた同じような言動をとってくる。現に慰安婦や徴用工、原発関連の話を何度もぶり返していますし、天皇陛下への謝罪要求も複数回起きています。何度も繰り返すことで、いずれ国際的に既成事実化すると考えているのでしょう。慰安婦問題では、歴史的事実の研究も不十分なまま、国際社会で韓国側の主張が一方的に構築されてしまった前例もあります」

 さながらヒーロー映画の主役のように演じ、日本を敵役に仕立てようとする韓国。彼らと未来志向の関係を築ける日はくるのだろうか。

(道明寺さとし)

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