世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「佐藤輝よ、第二の坂本にはなるな!」

 また、この台詞を言わなアカンな。「アウト一回、ケガ一生」。巨人の坂本勇人がしょうもないケガで戦列を離れた。自分の立場を理解していたら、絶対に防がないといけないケガやった。言い方は悪いけど、歩兵はいくら故障しても代わりがおるけど、主力は代わりがきかないんやから。

 5月9日のヤクルト戦(東京D)。5回無死一、二塁の一塁走者で捕手のけん制にアタマから帰塁して、右手親指をベースで突いて骨折。長期離脱することになった。後ろの走者やったから、けん制はないと油断してたんやろな。でも、捕手は常にけん制で殺してやろうと狙っている。心構えしてリードしないといけない。亡くなったノムさん(野村克也氏)が「野球は準備で決まる」と常々言っていた。

 それと、いくら慌てても足から帰る習慣がついていたらケガは防げた。今はプロでもけん制の帰塁は「頭から戻れ」と間違った指導をしているコーチがいる。ほんまにその考え方は改めてほしい。その前日の8日には、ソフトバンクのグラシアルが二塁走者で三ゴロで飛び出し、頭から帰って右手薬指を骨折した。ソフトバンクはエースの千賀、東浜、抑えの森を欠き、デスパイネも不振で2軍に落ちている中で、4番・グラシアルまで消えた。工藤監督も頭が痛いところや。

 坂本が骨折した同じ9日には、DeNAの倉本も阪神戦の二ゴロで一塁にヘッドスライディングして、左手薬指を骨折した。飛び込みはプールでするもの。硬いベースに指から突っ込むのは、自分でケガしにいっているのと同じ。僕から言わせると「自分はこれだけ一生懸命やっています」というファンや首脳陣に対するポーズでしかない。

 コロナ禍のステイホームで、野球中継を2つ以上同時に見ているけど、特に最近、ヘッドスライディングが増えてきた気がする。あっちでもこっちでもやっている。それを「闘志あふれるプレー」とか「ガッツ」や「気迫」と称賛する実況アナウンサーも反省しないといけない。テレビで見ている野球少年も、ヘッドスライディングすると褒めてもらえると勘違いしてしまうよ。プロは子供たちの本当の模範となるプレーをしないといけない。

 王さんの一本足打法やイチローの振り子打法がちびっ子にマネされたように、今は柳田のようにややアッパー気味に振り抜くスイングがマネされている。それと同じようにヘッドスライディングまでマネされたら大ケガのもと。少年野球の指導者も注意してほしい。

 気になるのは、阪神のドラフト1位ルーキーの佐藤輝明も派手なヘッドスライディングが多いこと。9日のDeNA戦でもサンズの二塁打で一塁から生還。ホームにヘッドスライディングして「激走」とテレビや新聞でたたえられた。でも僕から言わしたら、頭から滑る必要は全くなかった。最後まで足を動かさず横着しただけ。しっかり足から滑ってほしい。

 イチローも僕と一緒で、ヘッドスライディングやダイビングキャッチはしなかった。佐藤も「ケガをしないいいプレー」を心がけてほしい。ヘッドスライディングは高校で野球をやめる子の最後だけで十分。スーパースターの階段を着実に上っている佐藤がケガで離脱となったら、ファンはガッカリする。僕もステイホームの楽しみがなくなってしまうよ。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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