ホンダは4月23日に三部敏宏社長の会見を行ったが、その席上、三部社長は「2040年にEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)の販売比率をグローバルで100%」にするという目標を掲げた。
「全モデルをしかも達成時期まで明示して本格的な切り替えを公表したのはホンダが初めてです。このことの意味は大きい。というのも、100%電気に切り替えるということはつまり、『もうエンジンは作らない』と宣言したようなものだからです」(経済ジャーナリスト)
自動車メーカーが自動車メーカーたりえたのは、エンジン製造の独自技術があったからだ。メーカーがしのぎを削ってその技術を高めたから、後発メーカーが勝負を挑んだところで普通はかなわない。ところが、電気に切り替えるということは、今度はモーターで車を動かすということだ。そこに既存の自動車メーカーの優位性はそれほど高くなく、参入障壁はグンと低くなる。さらには来るべき自動運転のシステムといった他の技術的要素も必要ということで、今、車産業で異業種参入が相次いでいる。
「あのアップルが他の自動車メーカーと組んでEV参入に向け動いていることはもう有名ですが、その他にも特に中国勢の異業種参入の動きが顕著で、バイドゥ、ディディ、アリババが地元自動車メーカーと組んでEV参入を公にしています。それ以外でも、半導体世界No1の台湾のホンハイが中国、アメリカ、欧米メーカーとのタッグでの参入を、日本でも精密小型モータで世界シェアトップの日本電産がEV用プラットフォーム事業への参入を表明するというように、百花繚乱の様相を呈しています」(前出・ジャーナリスト)
さらに国内に目を転じれば様々な参入の動きがあって、帝人と出光興産が他社と組んでEV開発に乗り出し、あのソニーも家電・IT見本市でEVの試作車を披露している。
ところでこれらの新規参入組の顔ぶれを見れば気がつくように、製造業でなくIT企業が自動車の世界への参入を図っていることが分かる。
IoT化しつつある自動車業界では、産業革命並みの変化が押し寄せているようなのだ。
(猫間滋)