被害額276億円!「架空取引」マネーが芸能界に流れていた

 一部上場企業を舞台にした詐欺事件が、思わぬ波紋を呼んでいる。逮捕された主犯格の容疑者から月3000万円もの大金が、紅白歌手で人気グループのリーダーが経営していた会社に振り込まれていたというのだ。

 警視庁捜査関係者が語る。

「警視庁が2年も前から捜査しながら立件せず、その間に東京地検が関連の資料を押さえて捜査に乗り出すかに見えた事件で、ようやく警視庁が動き始めた。それと同時に、関係者に著名人がいることがわかり、結構な話題になっている」

 問題の事件とは、システム開発会社ネットワンシステムズが主導し、東芝や日本製鉄、富士電機といった大手企業傘下のシステム開発会社などが関わった、総額1000億円を超える仮想取引のことだ。被害総額は276億円に上るという。

 いわゆる「循環取引」と呼ばれるもので、商品などは実際には動かさず、資金だけがいくつもの取引先をめぐって最終的に最初の会社に戻るような詐欺的取引を指す。売り上げを水増しして業績が上がっているように装うために行われるものだが、その背景には公にしにくい巨額の損失や経営不振、資金流用や横領といった不祥事、犯罪行為があることが多い。

 この事件について、地検関係者は、こんな内幕を明かした。

「昨年末、東京地検がこの事件に注目した。実は、地検が手掛けたカジノ汚職の捜査の中で、ネットワンシステムズに関わる資料が押収されていたからだ。その資料によれば、同社から飲食店経営や芸能人のマネジメントなどを行っているとされるA社に、月間3000万円もの振り込みが、長期にわたって行われていた。循環取引に関わる流用資金や横領の一部が秋元司議員を支援するA社に流れていたわけで、おかしな政治資金の流れもあったのではないかと関心を呼んだ」

 そんな地検の動きを察してか、警視庁は今年3月に入って関係者の逮捕に踏み切った。だが、容疑は別の詐欺であった。

 逮捕されたのは、ネットワンシステムズの営業を担当していた課長級の元社員。容疑は、同社が受注した中央官庁のシステム開発をめぐり、14年6月、取引先から購入した数十台に及ぶパソコンを、別の機器の納入経費として請求するよう指示し、経費をごまかして約1500万円を詐取したというもの。

 元社員は、購入したパソコンを業者に約600万円で転売したというが、同じような転売はほかにもあり、総額2億円を超える利益を上げ、着服していたとみられている。

 警視庁は現在、その裏付け捜査を進めているとされるが、これはあくまでも事件解明の端緒。本丸は「循環取引」だという。捜査関係者が語る。

「元社員は経費のごまかしなどのほかでも、官庁の発注案件を利用していた。ありもしない発注を装って売り上げを計上すると同時に、発注を丸投げできる会社グループを形成し、最終的に自社に戻ってくるような仕組みを作ってカネを流していた」

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