大手出版社に勤務する50代の総務部長が、苦笑いしながら語る。
「2週間の在宅勤務明けに出社した女性社員の鼻が高くなっていて、ビックリしました。マスク越しとはいえ、ピンと鼻筋が通っていて、すぐに違和感を覚えたほど。ほかにも目が二重になっている若手社員や、首のしわがなくなったベテラン社員もいて……。コロナ禍で美容整形がブームになっているという話は聞いていましたが、身近で起こっている変化に驚くばかりですよ」
コロナ禍による在宅勤務や店舗の休業で、「この機会に」と、美容クリニックで美容整形する人が急増している。美容業界の事情に詳しいライターが語る。
「たとえ『プチ整形』といえど、身体にメスを入れるとなれば、外科手術と同様、術後の赤みや腫れがとれるまでに、それなりの『ダウンタイム』が必要になります。これは皮膚科などで行う『レーザー治療』や『ケミカルピーリング』なども同様です。ダウンタイム時は、外に出て紫外線に当たることはできるだけ避けるべきですから、そう考えると、外出自粛が要請されている今は絶好の機会ということです」
そんなことから、世界的に美容整形バブルが到来していると言われて久しい。日本でも昨年4月には公益社団法人・日本美容医療協会がマスクなどの医療物資の不足を受けて、《美容医療は不要の医療ではありませんが、多くの方にとって不急の医療と考えます》《手術後の継続的な治療などの必要な場合を除き、今お考えの美容医療は感染が収束するまでお待ちいただきたいと考えます》と、異例の自粛要請を出したほどだった。
「昨年からの二度にわたる緊急事態宣言の発令で、『コロナで時短営業になり暇になった』と、水商売関係のニーズが一気に増えたことも影響しているでしょう。『今しかない』という気持ちで駆け込み需要が高まったことで、ふだんは閑古鳥が鳴いていたようなクリニックにも問い合わせが殺到していると聞きます。なかには衛生管理もズサンで、アフターケアもろくにしていないところもあるようで、そんなクリニックでの施術は大きなリスクを伴うことは言うまでもありません。実際、中国では2月初頭に若手女優が美容整形に失敗したとして、鼻先が壊疽。鼻が黒く変色した自撮り写真をSNSにアップして世界的なニュースになりました。もしも美容整形手術をお考えなら、けっして早まらず、安心できるクリニックで、納得するまでカウンセリングを受けてからにすべき。安易な気持ちで美容整形に走るのは避けるべきだと思いますね」(前出・ライター)
施術後には痛みや精神的なストレスで、本来身体が持つ免疫力が著しく低下すると言われる。その免疫低下がコロナの感染リスクを高めることを忘れてはいけない。
(灯倫太郎)